大学四年になると授業数も少なくなり、学校に顔を出すのは卒業研究の打ち合わせくらいです。今年度の大イベントとして、現在慌ただしく準備しています。
今回のブログでは、その内容について軽く解説したいと思っています。
卒業研究のテーマは翻訳です。明治初期に生まれた造語について調べることにしました。
明治初期、日本に西洋の文明が伝播し、制度や習慣が大きく変化しました。 近代化=西欧化することが重要であり、産業技術や社会制度、学問・思想や生活様式を取り入れるため、外国の言葉を日本の言葉に置き換えることは不可欠だったのだと思います。そのため、翻訳や新造語を造ることになるのです。
私は文学部で言語について学び、日常で使っている言葉の意味について興味を持つようになりました。生活している以上、誰しも言葉の不思議について興味や疑問を持っているのではないでしょうか。
例えば、「社会」という言葉があります。普段何気なく使い、また小学校の一科目でもあります。
この言葉はソサエティという英語の訳語ですが、当時の日本にはこの言葉の概念は存在しませんでした。
「社会」という言葉は、社と会を組み合わせた造語であり、社の語感も会の語感も乏しい言葉です。簡単に説明すると、雰囲気で造られた言葉です。
ですが、今ではこの言葉を無くして、この言葉を説明することは難しいです。それほど、この「社会」という言葉の器の中には様々な意味が含まれているのです。長い歴史を経て、また多種多様な文化に触れながら、育ってきた言葉なのです。
ちなみに、このことをカセット効果と呼びます。本来は意味を持っていない言葉に、あたかも意味があるように読者に受け取ってもらう効果です。この理論は提唱されているのは柳父章で、詳しくは「翻訳成立事情」という著書に書かれています。
当時、このカセット効果を用いて翻訳された言葉はたくさんあります。もちろん、定着せずに消えていった造語(翻訳語)もたくさんあります。「社会」は激しい競争率の中で生き残った貴重な言葉の一つなのです。
この他にも、明治初期に生まれた造語はたくさんあります。それらが、どのように訳されているのか、誰に訳されたのか、またどのように定着したのか、少しづつ解析していきたいと思っています。
今回は以上です。