♪バナナが一本あったとさ
青い南の空の下
子供がふたりで取り合いっこ
バナナはつるんと飛んでった
バナナはどこに行ったかな
バナナン、バナナン、バ~ナァナン!♪
という歌をご存じだろうか。
高校時代の親友Tは人見知りが激しかった。
嫌いなタイプとは口を利かないし、
好きでも嫌いでもない相手とも口を利かない。
だが、ひとたび心を許した相手にはよく喋るし人懐っこかった。
心を許した相手のことは何があろうと絶対に裏切らないが、
それまでの信頼関係を構築するのがやたらと面倒臭い男なのだ。
そんなTが、陽気な性格を心置きなく発散できる桃源郷は、先輩がいないときの柔道部だった。
柔道は弱いが笑いのセンスは抜群の柔道部、人を笑わせることに関してはみんな有段者で、僕たち部員は笑いで腹筋を鍛えていたといっても過言ではない。
体育会系のクラブにはよく
「○○が済むまで帰ってはいけない」という厳しいしごきがつきものだが、
うちの場合はよく「センパイを笑わすまで」という、柔の道とは一切関係のない厳しいノルマが課せられた。
そんな柔道部だから、せいぜい市民大会の準優勝どまり。
勝利の女神は一度たりとも訪れなかったけど、笑いの神々は多くの奇跡と感動を与えてくれた。
2年生の夏、とうとうTにとって、目の上のタンコブである先輩たちが引退した。
Tの頭上にどんよりとかかっていた黒い雲が去り、虹色の光が差し込んだに違いない。
よほど嬉しかったのだろう、先輩たちが帰ってしまうと、Tは道場の中を軽やかなスキップでグルグルと回りだしたと思ったら、突然バナナの唄を歌いだした。
道場の掃除をしていた後輩たちはTの豹変に驚いて、キョトンとした顔で彼を目で追っている。
「♪バナナン、バナナン」と大声で歌いながら有頂天なT。
「Tさんが壊れた」と、ざわざわと後輩たちが心配しはじめたのだが、
「おまえらに紹介しよう、あれが本当のTや!」と、僕は情けない告白をした。
「今まで黙っていて悪かった」と。
すると、そんな僕の情けない気持ちも知らずに、強烈な躁状態のTも元気よく叫んだ。
「♪バナナン、バナナン・・・そうや!これがオレの本当の姿や!」
青い南の空の下
子供がふたりで取り合いっこ
バナナはつるんと飛んでった
バナナはどこに行ったかな
バナナン、バナナン、バ~ナァナン!♪
という歌をご存じだろうか。
高校時代の親友Tは人見知りが激しかった。
嫌いなタイプとは口を利かないし、
好きでも嫌いでもない相手とも口を利かない。
だが、ひとたび心を許した相手にはよく喋るし人懐っこかった。
心を許した相手のことは何があろうと絶対に裏切らないが、
それまでの信頼関係を構築するのがやたらと面倒臭い男なのだ。
そんなTが、陽気な性格を心置きなく発散できる桃源郷は、先輩がいないときの柔道部だった。
柔道は弱いが笑いのセンスは抜群の柔道部、人を笑わせることに関してはみんな有段者で、僕たち部員は笑いで腹筋を鍛えていたといっても過言ではない。
体育会系のクラブにはよく
「○○が済むまで帰ってはいけない」という厳しいしごきがつきものだが、
うちの場合はよく「センパイを笑わすまで」という、柔の道とは一切関係のない厳しいノルマが課せられた。
そんな柔道部だから、せいぜい市民大会の準優勝どまり。
勝利の女神は一度たりとも訪れなかったけど、笑いの神々は多くの奇跡と感動を与えてくれた。
2年生の夏、とうとうTにとって、目の上のタンコブである先輩たちが引退した。
Tの頭上にどんよりとかかっていた黒い雲が去り、虹色の光が差し込んだに違いない。
よほど嬉しかったのだろう、先輩たちが帰ってしまうと、Tは道場の中を軽やかなスキップでグルグルと回りだしたと思ったら、突然バナナの唄を歌いだした。
道場の掃除をしていた後輩たちはTの豹変に驚いて、キョトンとした顔で彼を目で追っている。
「♪バナナン、バナナン」と大声で歌いながら有頂天なT。
「Tさんが壊れた」と、ざわざわと後輩たちが心配しはじめたのだが、
「おまえらに紹介しよう、あれが本当のTや!」と、僕は情けない告白をした。
「今まで黙っていて悪かった」と。
すると、そんな僕の情けない気持ちも知らずに、強烈な躁状態のTも元気よく叫んだ。
「♪バナナン、バナナン・・・そうや!これがオレの本当の姿や!」