僕が高校生の頃、某楽器店の掲示板で募集した、
ローリング・ストーンズのコピーバンド
集まってきたのはみんな僕より年上の社会人、
だけど、今から思えばどうしようもない人たちだった。
 
社会人バンドの練習は基本的に夜中だった。
 
レンタルスタジオでダベっている高校生バンドたちを前にすると、
ひとりを除いて、メンバーはなんとなく気恥ずかしそうな態度をとった。
 
しかし演奏がはじまると、さすが大人の貫録で、
そのクオリティに圧倒された。
 
僕が仲間と組んでいたいくつかの高校生バンドとは音質が違う。
 
ソリッドでシャープで、しかもパワフルだった。
 
はじめて演奏したのは、
ジャンピング・ジャック・フラッシュ」。
 
この瞬間のゾクゾクとした感じは、今も忘れられない。
 
普段はいろいろとクセのある面々で、困った人たちなんだけど、
皆さん本当にツボを心得た、カッコいい演奏をする。
 
ところがここにきて、
ボーカル担当の僕に、最大の問題が発生した。
 
何しろ歌詞はデタラメなカタカナ英語だし、
15~16歳の懸命なボーカルに、
ソウルフルな味なんて出すことができない。
 
声変わりすら完璧でなかったフラット気味の僕の声は、
メンバーのお気に召さなかったのだ。
  
 
急遽、僕の声質を変える一大プロジェクトが組まれたのだが、
社会人といっても、20代の彼らに「正しい考え」など存在せず、
酒でノドを焼く」という、もっとも原始的な選択肢しかなかった。
 
「上田正樹さんがそうした」という情報を、
チャーリーさんがどこからか仕入れてきたのだ。
 
とにかくノドが切れて血がにじむまで大声で歌い続けて、
度数の高い酒でうがいをする。
ルゴールでもいいらしいのだけど、
手軽に手に入れられるのは「酒」だった。
 
僕は当時、地元の居酒屋兼スナックでバイトしていたんだけど、
期限切れのボトルからウイスキーやブランデーを貰って、
トリスのポケット瓶に移し替えるんです。
 
ポケット瓶をジーパンとお腹の間に差し込んで
スタンドマイクの前に立つなんて、 
 
ピカピカの気障でいられそうなものですが、  
 
しかし、このうがいこそが阿鼻叫喚の地獄だった。