「キースさん」(前編)
以前にちょっと書いたかもしれないけど、
高校生の僕は、いろんなバンドを組んだり掛け持ちしたりして、
地道な音楽活動をやっていたんだけど、
やっぱりジュリー的なバンドが組みたかった。
しかし身近に僕の話に乗る仲間なんて皆無だった。
何しろみんなラウドネスや44マグナム、アースシェイカーなどのヘビメタに夢中で、ギタリストは早弾き、ドラムは2バス、ボーカルはハイトーンじゃないと、まったく話にならなかった。
「速い」とか「激しい」ではなく、ロックはまずカッコよくなくちゃ、
スポーツじゃないんだから。
一計を案じた僕は、行きつけの楽器屋のメッセージボードに、
「ストーンズのコピーバンドを組みたし」と張り紙をした。
ひょっとしたら大学生のお兄さんくらいだったら、
そんな話に乗ってくれるかもしれない。
アットホームな雰囲気で、ストーンズのコピーをやりながら、
徐々にジュリーに移行するという作戦だった。
1週間もたたないうちに、「張り紙をみたんやけど」と連絡が入った。
ストーンズだけに、年上は覚悟していたんだけど、
連絡をしてきたのは20代の後半だった。
まあ、先方もまさか僕が高校生だとは思っていなかったようですが。
「とりあえず一回直接会って話そう」ってことで、
なぜか天王寺で待ち合わせした。
やってきたのは、キース・リチャーズだった。
いや、キースに感化されたルックスというか、
オーラを身にまとった人がやってきた。
黒い皮のパンツにデロデロに伸びた赤いTシャツ、
指にはたくさんのスカルリングで、
腕にはじゃらじゃらブレスレット。
天パで、彫りの深い目、長身。
マルボロの煙を燻らせながら、フラフラ歩いてくる。
「この人、シンナーでも吸っているんじゃないか」という感じ。
その瞬間、僕の作戦はガラガラと音を立てて崩れた。
このキースさんに、
トッポやタローになってくれ、なんて言えません。
ただ、やはり僕としてはこの人物に別な興味が湧いてきた。
「どこまでキースなんだろう」ということ。
20代後半で、楽器屋の張り紙を見て連絡してきた男、
初対面で「キースと呼んでくれ」だもの、
まず気になるのはギターの腕前です。
そして人柄・・・。
(後編に続く)