こちらの作品は私のオリジナル作品です。
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盗作では有りません。
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「…そうだったのか」


旦那は、私を抱きしめたまま力なくつぶやく


「………今の赤潮は、あちきがここに身請けして出た金と、大旦那が定期的に出しとる金でまかなっとりんす


まだ小さい子らもいる赤潮にとったら、神様でありんす」


声色を少し低めに、小さな声で言い放つ


「…………こんなこと言ったら、今の蘭には、言い訳にしか聞こえないだろうが……澄舞さんが本当の身請け人だったこと、あの49日の日まで知らなかったんだ………」

「…………え?」


「…………親父には、似合いのいい娘が見つかった。女朗だが、安心できるところから選んできたとしか伝えられていなかった

ましてや、澄舞さんが本来身請けしてくる話や、どんな感じの娘で、年はいくつなのかなんて親父は話さずにいた」

「………………」


「私は、まったくそんなことは気にも留めていなかったから、親父が話さないことにもなんら疑問はもたなかった

今思えば、あのとき、誰がくるのかちゃんとわかってさえいれば、蘭が身請けしてきた理由をもっと早くに知ることができたんだろうな」


旦那は、苦しそうに言い放つ

その声色に、何故かこちらの胸がキュッと苦しくなる

しかも、先程なんと言っていた?


「旦那………49日の日って………番頭はんから聞いたん?」


私は、少し体をずらして問い掛ける

「…………榊原は知っていたのか?」


旦那は、逆に意外そうな顔で問い返してきた


「番頭はんには、あちきが話しんした
近くの茶屋に呼ばれて、旦那にきつくアタリすぎやしませんかみたいなこと言われんして、あちきが自分の納得いった身請けでありんせん事も含めて、全部話しんした

せやけど、番頭はんからやないなら、どなたから聞きはったんでありんす?

あんときや、大旦那様は、仕事の帰りに直で赤潮に来てはりんした。あとは大女将はんからでありんす?」



私は、不思議そうな声色で聞いた



「……………赤潮の旦那から聞いた」


「赤潮の旦那はん?
え、待ってくなんし…………

旦那はんまさか………来はりましたん?あの日…………澄舞姐さんの49日の席に………」


私は、信じられない気持ちで言い放つ


「…………ああ、行った」


旦那は静かに肯定の言葉をはく


「………あの日、家のもの達には内密に、赤潮へ足を運んでいたんだ


蘭が大切に思っていた姐女朗ならば、旦那の私も行かなくてはならない気がしてな

そしたら、うまい具合に赤潮の旦那に出くわしてね


そこで、旦那から………離縁して貰えないかと頼まれた…………」

「…………え」


私は、その言葉に固まる


「…………私も驚いて、なぜかと理由を説いた

その時に、初めて、あの49日を迎えた澄舞という女朗が本当の身請け人であり、蘭は、その代理で見立てた人間だと言われたんだ

赤潮の存続の為に、無理矢理頼み込んで嫁がしたが、お互いが幸せな気持ちになれない、私にも、辛い思いをさせている

なら、この婚姻はなかったことにすればいいのだと言われた」


「………赤潮の旦那はんが………
そないなこと…………」


私は、あの温厚な赤潮の旦那の顔を脳裏に思い浮かべる

何があっても、絶対に声を荒げない、珍しい旦那だった

みんなから慕われ、優しい【父】として、愛されていたあの人が…………


せっかくの好機を手に入れたはずだったのに。
離縁してくれと頼み込むとは…………


「……………なぁ、蘭」


「………なんでありんす?」


しんみりとした声で、名を呼ばれて、どうしたのだろうと思いつつ、返事を返す









「離縁…………しようか?」







「……………………え?」






旦那の言葉に、






頭が真っ白になってしまった…………………