こちらの作品は私のオリジナル作品です。
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そのまま、自分の感情に戸惑った状態でいると、
何を思ったのか若旦那はゆっくり私の髪を撫ではじめた

幼い頃、よく赤潮の旦那にしてもらったかのように、ゆっくり、ゆっくり、髪を撫でる


いかん、また、泣けてきそうやわ…………


弱い姿は見せたくないのに



「…………や、……」

「…………ん?」


少しの間、その状態でお互い一言も話さずにいた


そして、小さな声でようやっと言葉を発するが、旦那には聞こえなかったらしい



「いらん世話や…………」


今度は少し大きな声で言い放つ

だがあまり声を出すと半分泣きそうになっているのがばれてしまうから出したくないのが本当………


「………うん、」



旦那は、今度は聞こえたのかはっきり頷く


しかし、髪をなでる手は止めない





「…………あちきは、……姐さんの代わりに身請けされてもかまんした………」


「…………蘭?」


髪を撫でられながら、両膝を抱えて、数分そのままでいたが、ぽつりとそう呟く


若旦那は、不思議そうな声をあげるが、私が話し出すのを待ってくれるのが、気配でわかった



「…………姐さんに、好きな人がおったんなら、あちきは………何処へ代わりに身請けされても…………構んせんと思った…………それが、あちきにできる姐さんへの恩返しやったから…………」

私は、ゆっくりした口調で、話し始める


こんなこと、若旦那に話したところでどうにもならないが、優しく触れる手のひらの温もりにほだされて、
少し話してみたくなった

「………余程大好きなお人だったんだな………」


若旦那は、静かに言い放つ


「………好きなと言うより…あちきにとっては……誠のねぇさんでありんした

かじかんだ両の手を…………そっと暖かな柔らかい手のひらで…………包んで、部屋に入れてもろた時から……………



名をもろた時から…………姐さんはあちきのたった一人のねぇさんでありんす

せやけど……………、姐さんは…………あちきになも言わずに…………手紙だけ残して…………逝ってしまいんした
なんでかわかりんせん…………」



ぎゅっ、と両膝を握りしめながら、また涙を流さないようにとこらえる



「………あちきは……姐さんを、好きな人から奪ったここへは…………ほんまは来たくありんした


近寄りたくも

でも、赤潮のみんなを人質に取られとる今、逆らうことなんかできんした」



「人質…………」


若旦那は、幾分呆れ口調でそう言い返す



「そや、ここは、赤潮を人質に、あちきを買ったんや


二度と、ここから出て行けありんせん足枷として、
赤潮を人質にしたんでありんす…………」


私は、振り絞るような声で言い放つ