こちらの作品は私のオリジナル作品です。
他サイトで投稿しているものをこちらで載せています。
盗作では有りません。
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『あの娘は他の子らと違うて、喜怒哀楽が逆にでとる
解りにくいとは思うが、よう観とって欲しい

ほんで、あの娘の抱えとる苦しみを、焦らんで少しずつ取り払ってほしい


頼んだで?』








伊里早の旦那は、軽く笑いながらそう言い残し、帰っていった


始めは、そんな事があるだろうかと半信半疑だった


しかし、よくよく思い反してみれば、おかしい時があったのだ


食事をするとき、必ず下を向いてゆっくり食べていた

顔を見たくないのかと思っていたが、泣く一歩手前の状態でいたのならどうだろうと仮定してみる


何度もため息を吐き何かをこらえていたようにも思う

寝屋でも、背中を見せていたが、もしかしたらそれは、気付かないようにして泣いていただけなのかもしれない…………



いろんな仮定が頭の中を巡る



同時に、そこまで考えていなかった自分にも、腹立たしくもなる


「…………べつに、そんなんやあらしまへん………若旦那の思い過ごしでしゃろ…………」



ふいっと、身体を反対側へ向けながら言い放つ



私は、ゆっくりそんな夕蘭の背後に近づくと、そっと身体を抱き締めた



「………!何しはりますのっ!」

夕蘭は、急いで腕を振りほどこうとするが、背後から抱き込まれているため上手く解く事が出来ないでいた



「…………蘭、無理しないでくれ………」


「………!」


私の言葉に、ぴたりと動きが止まる


「…………こうすれば、見えないだろう?泣き顔なんて…………


我慢せずに、泣きたい時は泣いてくれ…………受けとめるから………わがままを沢山言った償いに、蘭の悲しみを全部受けとめるから……………気を張るな………頼むから…………」



私は、ギュッと夕蘭の身体を引き寄せる



「…………恨み事があるなら…………全部聞いてやるから………吐き出せばいい……………



なぁ、蘭…………



全部吐いて、すっきりしないか?」




私は、身体を密着させたまま、夕蘭の髪を撫でる



艶やかで、癖のない、柔かな感触だった





「…………や、……」


「…………ん?」



数分、そのままでお互いしゃべらずにいると、夕蘭が小さな声で何かを話す





「いらん世話や…………」


「………うん、」


私は、はっきり聞こえた言葉に、軽く頷く


なんでもいい、話してくれれば、それで