こちらの作品は私のオリジナル作品です。
他サイトで投稿しているものをこちらで載せています。
盗作では有りません。
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「2人には、後でも大丈夫だ

今は、蘭に始めに謝らないと、筋が合わないんだ」


「……………」


夕蘭は、意味がわからないといった感じに首を傾げた


「慣れない店の切り盛りやら買い取り売り込み…………本当によくやってくれたと感謝しているよ………本来なら、私がそれらを教えていかなくてはいけないことだったのに、君のことも考えず、無理に無理をさせて…………


本当にすまなかった」


私は、もう一度、深く頭を下げる

「…………別に、無理はしておらへんし………気になさらんでくんし………」

夕蘭は、少し弱めの声色でそう話す


「……そうかな?………仕事は無理してないかもしれないが、………悲しみを押さえて周りに接しているのは…………無理しているとは言えないのかい?」

「はい?」

「…………客や、ここで働いている皆に、君はいつも優しい態度で接していた…………だが、私にはいつもいつも素っ気ない態度で…………正直、酷く嫌われていたのかと思っていた


だから、こう言っては悪いけど。
君に何かしら心配してもらいたい、構ってほしくて、無理に酒を飲んでいたり、食事を抜いたりしていた。
今思えば、馬鹿な考えだったと思っているよ。

君が素っ気ない態度だったのは、口を聞きたくない、かまいたくないっていうより。
日中無理していた付けが回って、無口になっていたんだということに……気付けなかったんだから」

「………………」


そう言うと、夕蘭は、大きく目を開く


「………日中、明るく周りに接しているけど、それは長くは続かない

時間が立つにつれて、だんだんと悲しい気持ちが占領してくる


私といるとき、あまり向き合わないのは、泣いてしまいそうな顔を隠すため

言葉を交わさないのは、声が震えてしまうため

素っ気ないのは、他人に甘えないため。
違うか?」


ゆっくり、確認するかのようにいい終わると、夕蘭は、驚いた顔のまま固まってしまった


私は、それが肯定を示したものだと受け取る





やはり、伊里早の旦那にはかなわない





『それともう一つ、

良い事を教えてやる



あんたに、態度が冷たいんは、本人が自覚しとらんだけで、本当は、気を許しとる証拠なんやで?』

『は?』


『あの娘はな?警戒すると確かに無口になるが、ほんに嫌いな人間には、近寄ったり、布団は別でも隣で寝たりせん。
これは実証ずみやで?
何せ、うちの番頭が幼い頃のあいつと留守番しとった時に余程嫌われていたんやろな。寝かしつけようとしたが暴れて部屋に入らんかったらしい。
俺が帰るまで玄関先で座ったまま寝とった。

だが、あの娘は旦那と同じ部屋で同じ時を過ごしとる

憎む相手と思っていても、本に憎んでおるわけではあらへんのや


なぁ旦那?
気を許しとる証拠ってぇのは、必ずしも、相手を構う事やないんやで?しゃべらんでも、側にいりゃ、気持ちのどっかで気を許しとるんや


今のあの娘は、強い悲しみに溺れとるから、いくら明るく努めても、最後は落ち込む


けんど、いくら溺れておっても、気を許しとらん相手には、『表情が明るい』んや
己の弱さを、見せはせん。
だが、旦那の前ではつっけんどんしとる。これは俺も体験したからわかるが。少なからず気は許しとる』