こちらの作品は私のオリジナル作品です。
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「そや、すごいやろ?

まさか、このまま何も話さんわけにもいかんき、俺は、何日も澄舞の話を夕蘭にさせていたんや


その話だけは、うれしそうに話すからな?


ほしたら、1年過ぎた頃に、ようやっと少しだけ、自分の話を自らしてくれるようになったんや

それからは、徐々にではあったが、口をきくようになってなぁ


まぁ、俺ん後を付いてきたり、触るようになったんは、そのあと1年後やったけどな?


なんせ、丸1年は、どんな人間かを見定めておったようやからな?」

「見定め………ですか?」


「そや

誰でも、知らん人間が近づいてきたら、警戒するやろ?


それと同じや


夕蘭は、いざ仮身請けされて、これからどうなるんか不安で仕方なかったんや


そやから、話をしても無視するんは何を話したらええのかわからんから当たり前やったし、黙っとるんも話題の話が見つからんから当たり前


ただじっと俺んと周りの行動は見とった


何をするでもなくな?

俺たちは、好きなようにさせとった

理強いはしたくなかったからな?」

「……………」

伯真は、そういい終わると、じっと見つめていた伊里早から視線を外し、畳を見つめた

「………なぁ、若旦那


夕蘭が、若旦那に『夕蘭』と呼ばせなくない意味

考えたことありますかいな?」


黙り込んでしまった伯真に、伊里早はそう問い掛ける


言われた伯真は、首を傾げた


「…………意味、ですか?」

「そや………、わかるか?」


伯真は、ふるふると首を横にふる

「………そうか…………」


伊里早は、ゆっくりそう呟くと、反対側の障子を見据えていた


「…………あの子はなぁ


元々、父親の作った莫大な借金の形に預けられた子でな?


生まれた時には既に母親はいなく、いつも1人で家におったそうや

しかも……………親としては最低やね



あの子には、赤潮に預けられるまで………………名前がなかってん……………」


「………………え?」


伯真は、その言葉に固まる


近くで聞いていた2人も、同じように、驚愕していた


「………驚きやろ?俺もそれを赤潮の旦那から聞いた時は、唖然としたもんやわ



赤潮の旦那は、流石に名無しは可哀想やと、庭に咲いていた花
、『蘭』を名付けた


そして、澄舞と出会った頃に、蘭だけでは可哀想やと、夕日にあたる白い蘭が栄える事を想像して、澄舞が、『夕蘭』という名を名付けたんや


謂わば、『蘭』は旦那が、『夕蘭』は澄舞が付けた大切な名前なんや


夕蘭はな?この話が来て、澄舞は亡くなったと強く思っとる


いや、一番は…………この話が来るまで、澄舞が誰に想いを寄せているのか気付かなかった、自分が許せないやな、あれは………………

知ってさえいれば、わかってさえいれば、澄舞は今も、好いた人間と幸せに暮らしていたに違いないと思っとるんや


せやから、この話を持ってきた旦那らと、自分には、謝罪と思って、『夕蘭』と言う名は禁句にしたんや…………大切な澄舞の人生を、壊した罪滅ぼしにな?』