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「………あら、夕蘭やないか」


「女将はん」


李穂とそんな会話をしていると、前から声がかかる


「お、女将はんっ、すんません!今準備戻ります!」


李穂は、笑顔から一転して、慌てた顔でそう言い放つと、ぱたぱたと廊下を走っていく


「………なんや、あん姿見取ると、夕蘭のちぃさい時思い出すなぁ」


李穂の後ろ姿を見送りながら、女将さんは言う


「あちきのでありんすか?」


女将さんと並んで、ゆっくり前に進みながら問う


「ほや
あんたは今までの子らと違うて、自我が強い子やった

そやから、いっちゃん苦労したでぇ?」


ふふっ、と笑いながら言う


「中でも一番困ったんは、仮身請けの伊里早さんに譲り渡すときやったなぁ…………覚えとるか?」


そう女将さんに言われて、私は苦笑するしかない


覚えいるも何も、あれは自分でも物凄い暴れっぷりやったと、恥ずかしい記憶だった


「あん時は、ここから離れとうない言い張って、旦那や伊里早の旦那の頭を叩いたり、髪引っ張ったり、挙げ句は、服さえ着なけりゃ外には行けんと、裸になろうとしはったなぁ」


「………女将はん、恥ずかしいからあんま言わんといてくんし…………

ありゃあ、あちきも、やりすぎたと後悔しとりますから………」


苦笑しながら、言い放つと、女将はんは尚更コロコロ笑う


「…………はぁ~、


…………それを、難なく収めたんは、澄舞やった」


ひとしきり笑ったあと、ぽつりと呟く


その呟きに、私も黙る


「あん時は、ほんま、澄舞には感謝したなぁ


ほんでなきゃ、今ごろあんた、仮身請けなしに路頭に追い出されてた所やったわ」



苦笑しながら、言う


確かに、澄舞の姐さんに言われて、渋々ながらに伊里早の旦那の所へ行った



いまじゃあ、本当にあの時説得してくれて助かったと、感謝していた



「…………新しい家族


ほんまもんやないけど、おとんやおかんができんのに、何を拒む理由があるんか………


あの言葉は、あちきの一生の宝もんでありんす…………」


仮ではあるが、確かに姐さんがいうたように、伊里早の旦那と、今の女将さんは、よう私を面倒みてくれた


本当の家族のように…………