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澄舞の姐さんに会ったのは、私が12歳のころ

姐さんは、15歳で、既に仮身請けが決まり、身請け先と赤潮の屋敷を行き来していた


私は、まだ幼い事もあり、ほとんどは雑用ばかりだった

それでも、体を動かす事が大好きだった私は、雑用という任務は、正に天職だった
しかし、あれは冬ごろだったろうか…………冷たすぎる水に手を長時間浸けすぎて、両手がかじかみ、痛みに廊下の隅で声を殺して泣いているときだった……………



『………大丈夫かぇ?

あぁ、こないな赤くなってもうて…………

あちきの部屋に来なんし、直ぐに暖めんと、両手共に切ることになるで?』


たまたま通りかかった澄舞の姐さんに、そう声をかけられ、部屋で暖めてもらったのだ



それが出会い

思えば、私も、姐さんに出会った15歳を過ぎて、16歳で姐さんの代わりに身請けされたのだと………思い知る



皮肉なものだった


恩を貰った澄舞の姐さんの年越えた今に、恩を返す事無く身代わりであろうと、先に身請けされてしまった…………



姐不孝な妹だと、思い知る


「…………姐さん?」


急に静まり返った私に、不思議に思ったのか、李穂が首を傾げながら呼ぶ


「………李穂」

「……あい?」



私は、ゆっくり李穂の小さな頬に手を添える


「あんたは、本身請けされるなら、ほんまに好きになった人に、身請けされるんやで?」


「………好きな人?
身請けは旦那が選ぶんやないの?」


未だ理解していない年頃、そう言われてついつい笑ってしまう


「旦那が選ぶんは家族ぇ?

あんたが選ぶんは将来の旦那様や
将来の旦那様は、李穂が心から好きになった人を、選ぶんやで?」

「わっちの家族?

旦那はわっちの家族を探してくれるんでやんすか?」


両手拳を作って、そこだけ強調する


まぁ、まだ10歳


色気より食い気

恋より家族が勝つんは当たり前のこと


「そや。早よう、家族見つかるとええなぁ」



にっこり笑いながら、頭を撫でる


今はわからんでも、そん時に思い出してくれはったらそれでえぇ


私は、もうそんな恋ある身請けなんぞ……………



叶わん夢のまた夢



姐さんの代わりに身請けを受けてから、自分の恋は生涯見つからんと踏んでいたから