改修して見違えるようにきれいになった築約70年の住宅内部を「お披露目会」で紹介する野田勝さん(右)
「改装後の家を見て野田さんの行動力に感服した」。7月中旬、国道274号から少し離れた夕張市紅葉山地区で開かれた「民泊お披露目会」で、札幌のミュージシャン斎藤佑太さん(31)が語った。野田勝さん(40)が呼びかけた空き家改修クラウドファンディング(CF)に協力。他の参加者約30人とともに、築約70年とは思えないほどきれいになった住宅に目を見張った。
■半分は外国人
野田さんは2021年に夕張に移住。札幌ではハンモックを使った「エアリアルヨガ」などのジムを開き、会員は300人に達した。そこにコロナ禍が直撃し、多額の借金を抱えた。
「『財政破綻した市』ぐらいしか知らなかった」という夕張に自宅を新築。「地方でビジネスチャンスを考える場にしたい」と一般社団法人を設立した。パソコンやスマホ関連のセミナーを開くのと並行して民泊運営に取り組む。
1軒目は市北部、鹿の谷地区にある。一軒家を借りて、改装に約50万円かかったという。昨年4月にスタート。外国の民泊紹介サイトに登録し、利用の半分は外国人で、今では黒字になるほど客でにぎわう。
人口流出により空き家が目立つ夕張だが、改装すれば住める物件はそこそこある。市内で不動産業を営む箕田淳さん(45)は「夕張は新千歳空港まで車なら約1時間と近い。無人の住宅は劣化が進むので、改装して住めるようにするのは意義がある」と話す。特に市最南端の紅葉山地区は道央と道東を結ぶ国道と道東道インターチェンジ、特急が止まるJR駅があり、条件は良い。
■「便利屋」にも
野田さんの民泊4軒(うち準備中は2軒)のうち3軒は同地区にある。お披露目会を開いたのは2軒目で、参加した同地区の千葉勝市議(71)は「若い人が街を歩いてくれることで活性化になる」と期待。野田さんは「資金が豊富になくても力を合わせれば民泊を始められることを示せた」と笑顔で語った。
4軒目は元郵便局舎。全6室で、民泊のほか「高齢者らの困りごとなどを解決できる便利屋のような機能も持たせたい」という。
というのも、夕張市シルバー人材センターが会員数減で本年度内での解散を決め、雪かきや掃除などを頼める機関がなくなる。野田さんは「空き家改修を通じて輪が広がり、内装や水回り改修などができる人が集えば、いろんな要望に応えられる」と考える。
そのためには「一つ一つ実績を積み上げて地元の信頼を得ていきたい」。移住後3年間の生活の中で学んだことだ。
2024年9月5日 10:14北海道新聞どうしん電子版より転載