「柏ビレジ」自治会コミュニティーバス運行開始! 路線バス減便で地域交通はどうなる? 千葉 | NHK

千葉県柏市の住宅地「柏ビレジ」で、新たに運行を始めたコミュニティーバス。運営しているのは“自治会”です。

各地で路線バスの減便や廃止が相次ぐ中、交通手段をどう確保していくのか。自治会バスの可能性と課題を探りました。

(千葉放送局東葛支局・間瀬有麻奈)

「コミュニティーバス」出発進行!

6月30日、柏市北部の住宅街「柏ビレジ」で、コミュニティーバスの出発式が行われました。

コミュニティーバスの運行は、「柏ビレジ」自治会が貸し切りバス事業者に委託。つくばエクスプレス「柏たなか駅」から、「柏ビレジ」を通り、スーパーが入る複合施設などを結ぶルートを通ります。

運行されるのは毎週火曜・木曜・土曜の昼前から夕方の時間帯。料金は1回の乗車につき220円で、回数券か定期券が必要です。

「柏ビレジ」の課題

1980年代からの宅地開発で造られた「柏ビレジ」。現在、約1500戸の戸建てが建ち並び、約4000人が暮らしていますが、このうち6割は高齢者となっています。

地域では近年、柏駅や柏の葉キャンパス駅などを結ぶ路線バスが相次いで減便。食料品や日用品の買い物にはバスか車が欠かせないため、生活に影響も出ています。

地域を走る路線バス

路線バスの減便は不便です。平日でもだいぶ減ったし、日曜はもっと減ったと思います。

“地域の危機”立ち上がった住民

この危機に立ち上がったのが、地元の自治会です。

自治会長を務めるシュピンドラー千恵子さん。20年余り前、ドイツ人の夫や子どもとともに「柏ビレジ」に移住してきました。

シュピンドラーさん

地域に入ってみて、高齢者がとても多いことが分かりました。交通手段がないと高齢者も動けないし、外からの人も来ないので、「交通の不便さ」が地域を活性化する上で足かせになっていると思いました。

5年前に自治会長に就任したシュピンドラーさんは、まずは路線バスの増便を行政や事業者にかけあいました。しかし、採算性などを理由に断られました。

シュピンドラーさんは、自分の会社を経営している経験から、自治会のメンバーで力を合わせれば、自力でバスを運営できるのではないかと考えるようになったといいます。

写真提供:「柏ビレジ」自治会

「お金がない」「人がいない」といったネガティブな時には、自分でやった方が早いんじゃないかと思うタイプなんです。

自治会のメンバーには、さまざまな知識のあるパワフルな人材が揃っていましたので、人に頼らず自分たちでバス事業を始められるんじゃないかと思いました。

シュピンドラーさんのアイデアに共感した住民たちはプロジェクトチームを立ち上げ、それぞれ知見を持ち寄って議論を重ねました。

写真提供:「柏ビレジ」自治会

実際にバスを走らせる実証実験も行いました。どのルートであれば住民が利用しやすいのかなど、地域のニーズを慎重に見極めていきました。

写真提供:「柏ビレジ」自治会

こうした取り組みは、地元の中小企業が支えました。

シュピンドラーさんなどが協力を呼びかけて回り、運行を担う貸切バス事業者が見つかったほか、多くの協賛金が寄せられ、年間1000万円の運営費を賄える見通しが立ちました。

地元企業の社長

シュピンドラーさんや、ほかのメンバーの方の熱意を感じました。

まとまって何かをつくりあげる自治会の活動は多くないと思いますし、地域の活性化につなげたいという点も非常に共感しました。

運行は順調? 今後の課題は

2024年7月2日、「柏ビレジ」コミュニティーバスは運行開始の日を迎えました。

早速、利用した住民に話を聞くと…。

近いうちにもう車の免許証を返納するので、今後もバスを利用すると思います。

自転車代わりに車に乗っている人もいますが、高齢になると乗ることができなくなると思います。そうした時にはバスが必要なので、ぜひ事業が成功してくれればいいなと思っています。

運行開始から数日で回数券の売れ行きは目標の8割ほどと、まずまずの滑り出しとなった自治会バス。今後も継続的に利用してもらうために何をすべきなのか、地域で話し合いを続けていくことにしています。

乗ってもらわないと廃止になってしまいますし、運行するためには資金が必要です。

お金と乗る人の両輪がないと運営していけないので、乗客は待ってても来ないですから、積極的にPRを行って乗客を増やしていきたいと思っています。

自治会バス 今後の課題は

公共交通に詳しい名古屋大学大学院の加藤博和教授に、今回の取り組みの受け止めなどを聞きました。

地域の移動手段を住民が主体的に考え、自ら作っていくことは最も望ましい形だと思いますが、自治会が運営するバスはいくつか事例があるものの、都市部では多くなく、運行を目指しても実現まで至らないケースもあります。

住民の年齢層や地域のあり方は年々変わっていくため、自治会で長く運営を継続するのは簡単でありません。何か問題があれば躊躇せず、変えていくことも大事になります。

2024年7月5日NHK NEWS WEB ちばWEB特集より転載