「この柱はエンタシスという円柱。上にいくにつれて細くなります」
 函館市の遺愛学院本館にある講堂で6月8日、遺愛女子高2年の吉原朱音さん(16)は台本を片手に、ギリシャ神殿にみられる建築様式の特徴を解説した。遺愛女子中の学校見学会を前に、校舎を案内する練習場面で、吉原さんは「自分の言葉で魅力を伝えたい」と余念がない。
■国の重文改修
 1907年(明治40年)建設で国の重要文化財に指定されている同館は今年3月、遺愛の150周年に合わせた5年間に及ぶ大改修を終えた。象徴である薄いピンク色の外観や、モダンな内装が再生され、今秋には一般公開する予定。
 建築様式や歴史を学んだ吉原さんら2年生12人が「文化財コンシェルジュ」として案内する。川嶋秀夫事務長(62)は「遺愛の歴史や精神を生かした活動でアピールしたい」と強調する。
 5月中旬、福島基輝校長(67)をはじめ、市内の大学教授や弁護士ら遺愛学院の運営に携わる15人が、同校に集まった。次の100年を描くというテーマを掲げ、運営方針を話し合う検討会議だ。学習環境の向上はもとより、生徒確保への取り組みを強化することも確認。背景にはあらがえない少子化の波がある。
 同校によると、中高の全校生徒はピークの1976年の1292人に比べ、現在は4割減の745人。そして今は生徒の9割が道南出身。広く生徒を募集しようと今年3月、東京で学校説明会を初めて実施した。
 川嶋事務長は「10代の3~6年間を落ち着いた環境で過ごすのは、特に首都圏の人には魅力ではないか」と期待する。

遺愛学院本館の講堂に立つエンタシス様式の円柱を練習で説明する生徒たち(大城戸剛撮影)
■五島軒と連携
 地域での存在感を高めようと、地元企業などとの連携にも力を入れる。地域の課題解決に取り組む探究学習では昨年、市内の老舗レストラン五島軒と、コンブだしを使ったホタテ入りのレトルトカレーを開発。地場のコンブに加え、中国による日本産水産物禁輸の影響が大きいホタテの活用が狙いで、市内で開いた販売会で好評を得た。
 これを機に、五島軒は年間約100万食を販売するというレトルト商品「函館カレー」にコンブだしを加え、リニューアルした。アイデアが商品に採用され、探究学習で開発に取り組んだ3年市村有多さん(18)は「会社の伝統の味を変えることにつながり、びっくりした。少しは社会の役に立てたよう」と喜ぶ。
 福島校長は「女性が活躍できる場が広がる中、地域とともに生徒の可能性を開き、学校を発展させていきたい」と、次の1世紀を見据えた。(函館報道部 坂本麻保)

2024年7月11日 10:20北海道新聞どうしん電子版より転載