札幌市は市内の一般企業に勤める障害のある従業員を対象に、プログラミングやエクセルの活用法に関する無料のリスキリング(学び直し)事業を始めた。一般就労の障害者が情報通信技術(ICT)スキルを身につけ、デジタルトランスフォーメーション(DX)人材として長く働いてもらう目的。市によると、道内の自治体で同様の事業を行うのは初めてで、全国的にも珍しいという。

 1日に市内で開かれた講座で、聴覚障害や精神障害のある3人がエクセルで勤務表を作った。「大丈夫ですか?」「実は次の手順がわからなくて…」。参加者はスタッフのサポートを随時受けながら、2時間半かけて表を完成させた。聴覚障害があり、事務職として働く西区の宍戸亜也子さんは「ここで得た技術を使い、役に立てる人材になりたい」と話した。

 事業は、障害者の就労を支援するNPO法人「札幌チャレンジド」(札幌)に委託。コールセンター大手トランスコスモス(東京)が3月に企業版ふるさと納税で寄付した1200万円を、本年度の事業費に充てた。

 障害者職業総合センター(千葉市)の2017年の調査によると、1年後の職場定着率は発達障害がある人の71.5%が最も高く、最も低いのは精神障害がある人で49.3%。障害種別によるばらつきが浮き彫りとなっている。NPO法人の加納尚明理事長は「講座でスキルを得て生き生きと働いてほしい」という。

 本年度はほかに、WEB制作やデザインの計4講座を週2回、1講座当たり6~10回実施する。各講座定員10名。所属企業から申し込む。問い合わせは同NPO法人、電話011・769・0843へ。

リスキリング講座でエクセルを学ぶ受講者(手前2人)

2024年7月8日 22:56(7月8日 23:02更新)北海道新聞どうしん電子版より転載