【標茶】町内在住の森一久さんは95歳となった現在もなお、希少な存在となった北海道和種馬(ドサンコ)の育成に情熱を注いでいる。森さんにとって馬は10代から常に身近な存在。初夏の暑い日差しの照りつける中、つぶらな瞳のドサンコに愛情を注ぐ日々だ。

95歳の現在もドサンコ育成に情熱を注ぐ森さん
■開墾、農耕…「助けられ戦後生き延びた」
 森さんはオホーツク管内斜里町の出身で、80年ほど前に家族と標茶町茶安別地区に入植。開墾に馬は欠かせない存在だった。10代半ばで、当時弟子屈にあった道の拓殖実習場で畑作や酪農など農業全般について1年間学んだ。
 「戦後の食糧難の厳しさの中、馬は農業に欠かせない存在だった。大げさではなく、日本人が生き延びてこれたのは馬たちに助けられたから」と語る森さん。森さんに、農耕馬の扱いについて教えを請う農家も多かった。その後酪農を経て、家畜商を町内で長年営んできた。
 ドサンコは日本固有の馬で、体は小さいが我慢強く、温厚な気性で重い荷物運びや農耕馬に適し、北海道開拓に貢献した。現在は乗馬などで飼育されており、頭数は千頭ほどとされる。
 森さんは、北海道和種馬保存協会に所属。現在、知人の牧場の一部を借りてドサンコらを飼育。自宅から車で毎日牧場に通い、昨年に新たに1頭が誕生し、6頭になったドサンコの世話に力を注ぐ。森さんの同世代の人たちは、亡くなったり引退してしまったりした人が多いが、森さんの馬に注ぐ思いはいまなお熱い。
 森さんは「ドサンコは車に気づくと駆け寄ってきて顔を近づけてくる。これからも飼い続けたい」と、温かいまなざしで馬を見守っている。

2024年6月20日 19:20(6月20日 19:28更新)北海道新聞どうしん電子版より転載