今回の問題は、市教委が定める個人情報の取り扱いルールが徹底されず、学校現場の情報管理に対する認識の甘さが露呈した。一時紛失した資料は小中学校間での引き継ぎ時に作成されたもので「低学力」「親うるさい」など配慮を欠く内容。専門家からは「人権意識の欠如」として内容やあり方を問う声が上がる。
 市教委によると、資料は学級編成に用いるためのもので、中学進学時に子どもの性格や家庭環境、いじめの有無など配慮すべき事項を、あいの里東中が小学校側から聞き取って作成したという。
 市教委では「市教育情報セキュリティーポリシー」に基づき個人情報を管理しており、情報の機密性の高い順に3段階に分類。今回の資料は最も機密性の高い「児童・生徒、保護者、地域関係者の住所、氏名、電話番号、成績、評価などの個人情報が含まれるもの。公務執行上、特に重要なもの」に該当する。
 機密性の高い情報は、教頭など管理者の許可なく職員室外に持ち出すことを禁じ、許可がある場合でも、名前を黒塗りにするなど個人情報がわからないようにする必要がある。今回はいずれも守られていなかった。
 別の市立中で働く50代のベテラン教諭は「文書自体は作らないと学級編成ができない。市立中1女子のいじめ自殺を受け、ネガティブな情報も共有したい思いはある。ただ、引き継ぎ資料を職員室外に持ち出すことはあり得ない」とする。
 交流サイト(SNS)に流出した資料とみられる画像には、子どもの特徴や交友関係のほか「学年で1番面倒な人」「(親が)クレーマー気質」など誹謗(ひぼう)中傷とも取れる内容もあった。
 市教委は20日の会見で「資料には配慮に欠けた表現があった。世間から見れば当たり前のことが守られていないとの指摘を受けても仕方がない」と陳謝。人権に配慮した表現に努めるよう各学校に通知したことを明らかにした。
 学校の危機管理に詳しい鳴門教育大の阪根健二特命教授(学校教育学)は「子どもにトラブルが起きると、学校に批判の目が向けられるため、学校はできるだけ詳細な情報を得なければとの思いに駆られてしまう」と指摘。その上で「今回の資料の表現はあまりに不適切。非公開が前提の資料でも将来的に開示や裁判所など外部への提供を求められる可能性がある。あらためて引き継ぎ方法や生徒指導のあり方など議論すべきだ」と話している。

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2024年6月20日 21:26(6月20日 22:36更新)北海道新聞どうしん電子版より転載