道は市町村と共同で、保険適用外の先進的な不妊治療を受ける人への支援を広げている。全額自己負担のため高額になりがちな先進医療にかかる費用の7割を補助し、負担軽減につなげる狙い。2年目の本年度は昨年度の約1.5倍の167市町村で助成を受けられる見通しで、道は将来的に179市町村への拡大を目指す。

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 不妊治療は不妊検査や不妊症の原因疾患への治療のみ保険適用だったが、2022年度の診療報酬改定から人工授精や体外受精なども対象になった。
 道は保険適用の範囲拡大を受け、体外受精などを対象とした助成制度を終了した一方、先進医療への助成を昨年10月に開始。市町村と経費を2分の1ずつ負担し、初年度は107市町村が実施した。先進医療への助成は、東京都や福島県など22都府県も行っている。
 助成対象となる先進医療は、受精卵を撮影して状態を調べる「タイムラプス」(1回2万3千円程度)や、子宮内腔液を採取して細菌の様子を調べる「子宮内フローラ検査」(同4万4千円程度)など13種類。女性の年齢に応じて1回の先進医療にかかった費用の7割(上限3万5千円)を1子ごとに3~6回助成する。男性の治療も対象だ。
 道内の昨年度の実績は取りまとめ中だが、本年度は約3100件の助成を見込む。旭川市では昨年10月に助成を始め、半年で68件の申請があった。開始前から問い合わせが多く、「ニーズの高さを感じた」(市おやこ応援課)という。
 道は先進医療費の助成に併せて、医療機関までの交通費を補助する制度も創設。先進医療を受けられるのは札幌や旭川など都市部の11カ所に限られるため、自宅から片道25キロより離れている場合は1回につき約千~7千円支給する。
 札幌市中央区に住む30代の女性は6年前に不妊治療を始め、先進医療も併用している。「経済的なハードルが低くなり、ありがたい」として、道の助成への申請を考えているという。
 ただ、不妊治療の長期化に悩む人もいる。特に先進医療は国内外で臨床実績が少なく、日本生殖医学会のガイドラインでは大部分が推奨度(3段階)が最も下の3番目と位置づけられ、効果はまだ確定していない。
 北大大学院の前田恵理准教授(公衆衛生学)は先進医療の利用について「医師とよく相談することが重要」と助言する。その上で「行政は治療の有効性や制度について丁寧に情報提供してほしい。仕事と両立できるような仕組みづくりや妊娠前からの健康づくりについての啓発も欠かせない」と指摘している。

2024年6月18日 18:53(6月18日 20:01更新)北海道新聞どうしん電子版より転載