芦別市内の居酒屋やバー全約30店の前で踊る動画を交流サイト「TikTok(ティックトック)」で発信したら、芦別に関心を持つ人が増えるのでは―。
 4月、市福祉課の小山雄也さん(33)が市内の自宅で、後輩で商工観光課の北見翔舞(しょうま)さん(20)らに、まちおこしのアイデアを伝えた。北見さんは「楽しそう。インパクトがあり、芦別を世界に発信できる」と快諾。7月中旬までには完成させようと週1、2回仕事終わりに集まり準備を進めている。
 小山さんらは、地域活性化を目指す市役所若手職員有志グループ「ONE TEAM(ワンチーム)」のメンバー。地域に活力が失われていくことに危機感を持った小山さんが「人任せにせず自分たちの力でマチを盛り上げていこう」と、10~30代の職員一人一人に声を掛け、15人と昨年1月末に立ち上げた。小山さんが代表を務める。
 月会費を活動費にしているため大規模なイベントなどは難しいが、これまでも子ども向けの線香花火大会や、冬の公園にキャンドルをともす催しなどを実施。今年5月には市内の道の駅で開かれたイベントに参加し、射的や輪投げなどを連続して成功させるとお菓子のつかみ取りなどができるゲームを開催。子どもたちの歓声が響いた。小山さんは「自分たちも楽しみながら、マチを元気にしていきたい」と話す。
 かつて炭都として栄えた芦別は石炭産業が衰退し、1959年に7万5千人だった人口は1万1千人台まで激減。代替産業は育っておらず、少子高齢化と人口流出に歯止めがかかっていない。
 人口減が加速する中でとりわけ深刻化しているのが、若者の流出だ。芦別商工会議所によると、今春卒業した市内2高校の就職希望者計28人のうち、市内の事業所に就職したのは7人と3割弱にとどまった。
 危機感を抱いた芦別青年会議所は、ITや不動産など市内の起業者が事業内容を市民らにPRするイベント「Ashi-1GP(アシワン・グランプリ)2024」を今月30日に市内で初開催する。製品やサービス、実績、成長戦略や将来性などを説明し、賞金獲得を目指す。星の降る里あしべつ応援大使で外交ジャーナリスト・作家の手嶋龍一さんや芦別高の生徒会長らが審査する。
 イベント担当の道島悠太さん(39)は「熱い思いに触れて、将来一緒に働きたい、芦別で自分も起業したいと思ってもらえれば」と期待する。
 芦別青年会議所はピーク時に70人いた会員が現在は9人。慢性的な人材不足に悩まされている。それでも昨年は芦別での思い出をつくってもらおうと、子ども向けのピザづくり体験を実施したほか、芦別の良さを地元の人に再認識してもらうため、札幌圏の大学生が芦別再生のアイデアを競うイベントを主催してきた。
 高瀬諒理事長(31)は「若い人が一度故郷を出ても、将来帰ってきたいと思うようなまちづくりをしていきたい」と力を込める。
 <メモ>芦別市の人口は1959年の7万5309人がピークで、2024年5月末現在は1万1407人。このうち、15~64歳の生産年齢人口は5225人と、10年前の7割弱にとどまり、将来の労働力不足も懸念される。人口推移を過去5年(19~23年)でみると、毎年400人前後減っている。

ワンチームが参加した芦別市内のイベント「芦別林産フェスティバル元気森森まつり」で、パターゴルフを楽しむ親子=5月19日、道の駅スタープラザ芦別

2024年6月13日 11:01北海道新聞どうしん電子版より転載