人口減を食い止めようと、新十津川町が町内で新築住宅を建設する世帯に助成金を出す制度を始めたところ、移住・定住者が相次ぎ、空いている土地が足りなくなるほどの人気となっている。
 「新十津川町の住宅新築支援制度は充実している」。昨年7月から町内の新築住宅に住み始めた清水恵弥(めぐみ)さん(37)は、定住の地を新十津川に決めた理由をそう話した。
 新十津川町に隣接する滝川市の滝川第三小で「学びサポーター」として授業中などに児童を支援する清水さん。夫の博之さん(34)は滝川明苑中に勤める中学校教諭で転勤族のため、一家はこれまで岩見沢や芦別など転勤先のアパートで暮らしてきた。しかし、長女葉月ちゃん(5)が小学校入学後、転校せずに済むよう定住を決断。空知管内各地を探す中で、新十津川町の支援制度にたどり着いた。
 町は2014年度に制度を創設。内容は変更を重ねてきたが、20~23年度は新築住宅を建てる場合、1世帯当たり130万~180万円を助成してきた。制度は好評で、14~23年度末までに町外から来た156世帯を含む273世帯が制度を利用。清水さんも150万円の助成を受けた。
 町が制度を創設したきっかけは、人口減のスピードが想像を超えていたからだ。1955年のピーク時に1万6千人以上いた人口は6267人(今年5月末時点)となるなど人口減が顕著で、国立社会保障・人口問題研究所が2023年にまとめた50年時点の推計では、3714人にまで減ると示された。
 町は本年度から、さらに制度を手厚くした。新築の場合、1世帯当たり前年度比30万~50万円増の160万~230万円にした。本年度も町外から1件の申し込みがあり、相談も相次いで寄せられている。
 新築住宅用地は足りなくなっている。廃線となったJR札沼線跡地に整備した分譲地12区画も、募集した21、22年度中に売り切れた。
 そこで町は空き家に着目。物件情報を購入希望者につなぐ町の「空き家情報バンク」への登録を呼び掛けている。バンクは14年度からあるが、町は「今は登録してもすぐに購入や賃貸の申し込みがあり、物件は常に2、3軒しかない状態」とする。本年度から4年間、売買契約に至った場合、売り手に奨励金1万円を出す仕組みも用意し、空き家の掘り起こしを図っている。町は「空き家の流動化を進め、さらに多くの人に新十津川に住んでもらいたい」と話す。
 <メモ>新十津川町の、転入者から転出者を差し引いた社会増減はここ5年間、プラスの年が多い。2022年のマイナス31人を除けば、19年3人、20年84人、21年11人、23年20人となっている。出生者数から死亡者数を引く自然増減はマイナスが続くが、20年は社会増が上回り、人口が16人増えた。

 2024年6月12日 10:18北海道新聞どうしん電子版より転載