道内には札幌と旭川、苫小牧、北見にしかない、若年性の認知症当事者と家族でつくる会が、砂川市の市立病院を拠点に活動している。「空知ひまわり」。同病院認知症疾患医療センターの精神保健福祉士大辻誠司さん(61)が中心となって先月発足させた。
 若年性認知症は症状の進行が速いとされ、働き盛りで子どもの年齢が若いことも多い。東京都健康長寿医療センターの調べでは、当事者の約6割が発症時に就業していたが、うち約7割が発症後に退職した。
 砂川市立病院は地域がん診療連携拠点病院、地域周産期母子医療センターなどの機能を持つ中空知の中核病院。医師や看護師など計900人近い正職員を抱える。人口1万5千人のまちの病院としては異例の規模だ。
 2004年に「もの忘れ専門外来」を開設するなど先進的な認知症治療に定評があり、10年には道が「認知症疾患医療センター」のモデル病院に指定した。同年には、幅広い年代の認知症当事者と家族を支援する有償ボランティア団体「ぽっけ」が、医師らの呼びかけで発足した。
 こうした土台が、空知ひまわりの発足にも結びついた。会はかつて北竜町にあり、新型コロナ禍などのため23年に解散した。しかし、当事者や家族が心を寄せることができる場が必要と感じていた大辻さんが会の設立を提案。病院側は「空知にも当事者がいる。この病院で診察を受ける人も多い」として、会議室の提供や会の周知などの協力を決めた。看護師や作業療法士も参加し、国の自立支援医療制度や障害年金など経済的な支援策を紹介するほか、相談にものる予定だ。また、若年性認知症への理解を深めてもらうため、当事者や介護した人による講演会などを開く方針。
 初の例会は5月16日に同病院内で開かれた。集まったのは当事者とその家族、当事者だった家族を亡くした人の3人。「当事者の職場の理解が大切」「(亡くなった当事者を生前)地域のボランティアが支えてくれた」などと周囲の人の支えや家族の葛藤などの経験を話し、交流を深めた。参加者から「もっと長く話を聞きたい」との声が上がった。
 道内で先駆け、札幌で06年に発足したNPO法人「北海道若年認知症の人と家族の会」では月1回、当事者や家族らが交流する「つどい」を開催。平野憲子事務局長は「他の会員の経験を聞いて『自分だけではない』と感じ、力をもらえる」と会の意義を語る。
 道高齢者保健福祉課も「(当事者と家族の会は)本人や家族の不安を和らげる場。各地域にあることで、きめこまかな活動ができる」と評価する。
 空知ひまわりの大辻さんは「少人数でも息の長い活動にしたい」と話す。
 <メモ>若年性認知症は65歳未満で発症するケースをいい、東京都健康長寿医療センターによる2017~19年度の調査では18~64歳人口10万人あたり約50人いるとしている。全国の患者数は3万5700人と推計される。道や空知の統計はないが、砂川市立病院では毎年10人ほどが若年性認知症と診断される。

「空知ひまわりを、患者や家族同士の交流を通じて勇気付け合える場所にしたい」と語る大辻さん

【北竜町にあった同名の会を「復活」】若年認知症の人と家族支援 砂川拠点「空知ひまわり」発足へ 互いに勇気付けられる場に【北海道新聞デジタル】│北竜町ポータル (hokuryu.info)

2024年6月14日 10:08北海道新聞どうしん電子版より転載