根室管内中標津町内の焼き肉店「炭火焼肉 雅々(がが)」は午後6時ごろから客が増え活気づく。店内では岩谷学園ひがし北海道日本語学校の留学生が手際よく仕事をこなす。
 スリランカ出身のウェヌラ・シャシンタ・ラジャパケシャさん(24)はホール担当。炭火七輪の準備や配膳、片付けなどを任され、「一緒に働く皆さんと話し、たくさん言葉を覚えられて日本語が上達した。仕事が楽しい」と笑顔で言う。


町内の焼き肉店でアルバイトする岩谷学園ひがし北海道日本語学校の留学生(奥)

■双方にメリット
 同店は2021年の開校当初から計5人の留学生を雇用する。経営者で中標津飲食業連合会会長でもある菊池憲一郎さん(47)は「人手不足の中、留学生が来てくれて非常にありがたい。彼の成長が楽しみで、自分たちがどうサポートできるかも考えていきたい」と話す。
 留学生は出入国在留管理庁で資格外活動許可を得てアルバイトし、生活費や学費を稼ぐ。事業者にとっては貴重な戦力で、メリットは双方にある。働き口の確保は町商工会が協力し、事業者向けに、留学生の就労規則や学校生活に関する説明会を開き、雇用を望む事業者を同校に紹介する。現在は飲食店やホテル、スーパーやコンビニなど30事業者が61人を雇う。
 職場の仲間は家族のように留学生の成長を見守り、同校のスピーチコンテストや卒業式にも出席する。卒業式では留学生が「生活の相談に乗ってもらった。みなさんのおかげで楽しい生活を送ることができた」と感謝を伝えた。交流サイト(SNS)で近況を報告し合うなどの交流が続く。
 「地域とつながり、地域の人たちに留学生を育てていただいている」と、岩谷学園の岩谷大介理事長は話す。経営する横浜の専門学校にも日本語科はあるが、中標津ならではの特徴が「地域交流」だという。
 町は昨年、留学生が母国の料理の作り方を町民に教える教室を開催した。別のイベントでは町民が先生を務め、留学生や技能実習生がそば打ちや茶道、書道を体験した。留学生は夏冬の町内の祭りにも参加し、日本の文化や習慣を学んでいる。
■町民と共生進む
 留学生を応援する町民グループもある。「岩谷里親の会」は開校当初、慣れない環境で暮らす留学生を気にかける地域の女性たちが結成した。バーベキューパーティーを開き、コミュニケーションをとりながら中標津での生活を気遣う。上原房子会長(76)は「町が国際色豊かになり、共生が進んでいることがうれしい。出会いを大切に、母親のような気持ちで見守りたい」と話す。
 中標津には学びやが今春もう一つ誕生した。待望の高等教育機関だ。

2024年6月6日 9:46(6月6日 9:46更新)北海道新聞どうしん電子版より転載