深川市内の社会福祉法人「揺籃(ようらん)会」が運営する特別養護老人ホーム(入所者100人)は、2020年から外国人の介護職員を採用している。現在、ミャンマーからの技能実習生3人と、インドネシアの特定技能実習生3人の計6人が勤務しており「熱心に働く」と評判だ。
 ミャンマー出身のノー・ヤィヤィ・ウィンさん(23)について入所者の90代女性は「優しくていつも一生懸命」と目を細める。同僚の高橋祐子さん(40)は「仕事ののみ込みが早い。欠かせない存在」と高く評価する。
 技能実習生は3年が期限だが、ヤィヤィさんは優良認定を受けたことで延長が可能となり、現在5年目。20年に日本語能力試験(N3)を取得、さらに難易度が高いN2への挑戦を見据える。介護福祉士の資格も取得して引き続き日本に滞在することを望んでおり「ミャンマーの両親に仕送りを続けたい」と語る。


深川市の特別養護老人ホームで働くミャンマー人の技能実習生ヤィヤィさん。5年目を迎え、同僚や入所者からの信頼も厚く、夜勤もこなしている

 揺籃会が外国人の採用に踏み切ったのは、日本人の職員が集まらないため。同会は空知管内で二つの特別養護老人ホームを運営、15年ほど前までは入所者2人に対し職員1人の割合で介護サービスを提供していたが、人材確保が難しくなった近年は入所者3人を職員1人が介護する状況が続く。国の基準は満たしているものの、慢性的な人手不足が続いていた。
 20年から外国人材の採用に踏み切り、現在もう一つの特養を含め8人が勤務する。同会理事の山崎智広さんは「介護の質を維持するためにも、今後も外国人材を採用していきたい」としており、今年さらに8人を受け入れる予定だ。
 こうした現状を受け、深川市は23年4月から市内の介護保険施設が新たに外国人介護人材を受け入れた場合、経費の一部(特定技能外国人1人につき10万円、1法人当たり100万円まで)を補助している。
 外国人材の生活をサポートするために、行政が外国人地域おこし協力隊員を採用しているケースもある。
 妹背牛町は20年度以降、5人のベトナム人地域おこし協力隊員を採用。現在はズオン・ティ・フオンさん(26)とグエン・カン・リンさん(27)の2人で、ベトナムとカンボジアから来た町内で働く約50人の実習生にゴミ出しや交通安全のルールを教える。通院時には医師とのやりとりの通訳も行う。月2回町主催の「日本語教室」では講師役を務める。
 リンさんは「自分が日本語学校で習ったことを思い出して教えている」。フオンさんは「自然や観光、夏祭りなど、実習生には北海道でいい思い出をたくさん作ってもらいたい」と話す。町は2人の仕事ぶりについて「地域の人と外国人実習生をつなぐ橋渡し役としてよくやってくれている」と評価する。
 <メモ>厚生労働省の推計によると、2019年度に全国で約211万人だった介護職員数は40年度には約280万人必要。約69万人の確保が求められる。外国人を介護人材として受け入れるには①経済連携協定(EPA)②在留資格「介護」③技能実習④特定技能1号―の枠組みがある。出入国在留管理庁の統計によると、23年6月現在、空知管内(24市町村)の在留外国人数は1240人と10年間で約1.6倍となっている。

2024年6月8日 10:29北海道新聞どうしん電子版より転載