横浜市内の五つの市立中学にあった夜間学級が一つに統合され、4月で10年となった。夜間学級の教員らが、卒業生に進路や「やり残したこと」を尋ねるアンケートを実施し、学級にまつわる過去資料を収集。高齢者や外国出身者など、さまざまな生徒を受け入れてきた学びやの「今」を記念誌としてまとめた。教員研修などで活用してほしいと期待を寄せる。
 横浜は夜間学級の歴史が古く、1947年に始まった。その後は生徒数の減少などを理由に、2014年度に5学級が市立蒔田中学校(同市南区)に統合された。熊切隆校長(50)は「夜間学級は多様性を重んじる横浜の財産」と指摘する。
 蒔田中には、母国で学校に行けなかった人や、子どもの頃は働かなければならなかった高齢者、不登校を経て学び直したい若者といった学齢期を過ぎた人たちが仕事終わりの夕方から集い、学校生活を送ってきた。現在は19人が在籍する。
 「経験を共有し、次の展開につなげたい」(熊切校長)との思いもあり、蒔田中は記念誌の作成に着手。23年10月から約1カ月で、統合後の卒業生73人のうち26人が回答した。飲食店を出せたとの近況や「自信が持てるようになった」との報告だけでなく「もうちょっと勉強したかった」との声もあった。
 夜間学級の変遷をたどれるような体系的な資料は見つからず、作文集などから生徒数の推移を確認。把握できた限り、1967年度の32人をピークに増減を繰り返し、最近では学び直しを求める日本人生徒が増えた。
 今も変わらないのは、学びを支える周囲のサポートの大切さだ。養護教諭や言語サポーターに加え、区役所や社会福祉団体、児童相談所といった機関との連携も重要で、熊切校長は「教育の原点がある」と強調する。

記念誌を手にする横浜市立蒔田中学校の熊切隆校長=5月、横浜市南区

2024年6月8日 4:41北海道新聞どうしん電子版より転載