室蘭市の学校法人北斗文化学園が運営する北海道福祉教育専門学校(母恋北町)が、留学生や社会人経験者を集める独自の取り組みで、多様性豊かな教育を進めている。その結果、外国人材が介護福祉士などの資格を取得し西胆振の福祉施設に多数就職するなど地域貢献している。国籍や年代を問わず助け合って学ぶ「共生」の姿を追った。
 同校に今春入学した留学生は47人、在籍する留学生数は現在50人と、ともに過去最高だ。加えて、社会人経験のある日本人も毎年数人入学し、今春は30~50代の7人が入った。
■困りごと相談密に
 「今日はすごく良い天気だね」「授業で習ったこの部分を教えて」。同校の自立支援介護福祉学科(2年制)1年の教室では、そんな学生同士の会話が飛び交う。国籍は日本やベトナム、台湾など多彩だが、共通言語は日本語。留学生の日本語習熟度に差はあるが、意思疎通を密にし、授業や日常生活で困ったことを相談し合っているという。
 同校は高齢社会に対応する介護教育に力を入れ、2019年に介護福祉学科をより実践的にして自立支援介護福祉学科に改名。さらに20年には外国からの人材活用を見据えた日本語教育課程(6カ月、1年制)を新設した。
 同年にはベトナム・ハノイに日本語教師育成のサテライトを開設し、同国で高い知名度を獲得。ここを出た教師が現地の若者に日本語の基礎を教えるとともに、室蘭に本格的に日本語を学べる場があることをPRし効果を上げているという。
 今春、同福祉学科に入学したベトナム出身のグエン・ティ・ニュンさん(24)は「子どもの頃から日本が好き。おばあちゃん子で介護を学びたいという気持ちが強く、この学校への進学を決めた」。現在は室蘭のスーパーでアルバイトし生活費を賄う。「バイト探しの時や授業でわからなかった時は、クラスのみんなが助けてくれた」と笑顔だ。
 同国出身の1年、ダオ・ズイ・クアン・ミン・ドゥックさん(26)も「日本が好きで、日本で働くために入学した。介護が専門的に学べるのがいいですね」と話す。バイトはホテルとスーパーを掛け持ちし、毎日深夜2時まで日本語を勉強する努力家。「日本人の友達も、バイト先のお客さんも優しい」と話す。

幅広い国籍や年代の学生が学ぶ北海道福祉教育専門学校自立支援介護福祉学科の授業風景

■支える日本人学生
 彼らを支えるのが日本人学生。中でも社会人を経た30代以上が多い。2人と同じクラスの富樫沙希さん(35)は室蘭出身。歯科助手や店員として13年間勤務後「手に職を」と思い入学を決めた。祖母の介護を手伝っており「最近は授業で習ったことを祖母に実践してみるのが楽しい」。留学生の多さには「はじめはびっくりしたけど、素直な子が多く楽しい。日本のマナーや授業で習ったことを聞かれることも多く、話す機会も徐々に増えた」と言う。
 担任の高橋幸絵さん(41)は「社会人経験のある日本人の学生が多く、留学生に対して面倒見が良いし、頼りになる。今後は国籍や年齢も関係ない風景が多くの学校で当たり前になるのでは」と話す。
 同校は現在、職員がベトナムやモンゴルなど各国に足を運んでPR活動に力を入れ、今夏には台湾でも日本語教育のサテライト設置を予定。沢田豊理事長は「自分たちの目で見て学生を集めているので、高い志を持った人が入学してくれる。高齢社会の深刻化を見据え、海外からの介護人材育成に貢献したい」と語る。
 今春卒業した同専門学校の留学生9人全員が福祉分野の資格を取得し、西胆振各地の施設に就職した。
 胆振総合振興局は同校について「介護人材が不足している中、継続的に海外に足を運び外国人材を育成しており、胆振地域の人材育成に寄与している」と評価する。
 <ことば>在留資格「介護」 2017年に就労ビザとして認められた、外国人が日本国内で介護職として働くための在留資格で、更新することで永続的に日本で働ける。介護福祉士養成校を卒業または、介護施設等で3年以上就労するなどして介護福祉士の資格を持っている人が対象。2023年6月末時点で同資格を持つ在留外国人は全国に8093人、道内に161人いる。

2024年5月24日 22:06(5月24日 22:30更新)北海道新聞どうしん電子版より転載

 

・韓国の福祉施設職員、室蘭言泉学園を見学

障害児入所施設やグループホームなどを運営する社会福祉法人「室蘭言泉学園」(室蘭市母恋北町)は23日、韓国の福祉施設「マーガレット社会福祉会」の職員に対して施設見学会を実施した。韓国から来た13人は障害児入所施設の食堂などを見学した。
 昨年9月にマーガレット側からツアー会社を通して施設見学の要望があり、昨年11月に初回が実現。今回が2回目となった。
 冒頭、スライドを用いて双方の事業紹介をした後、障害児入所施設の食堂やトイレなどの施設見学などを実施。また、近くの地球岬の観光も行った。
 同学園の菅野登一郎理事長(76)は「マーガレットでは、われわれが行っていないバスケなどのサークル活動を実施している。参考になる話だった」と振り返った。
 同日、双方の職員のスキル向上に向けた交流推進などを定めた連携協定の締結も行った。

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障害児が入所する室蘭言泉学園の施設を見学し職員に案内を受ける韓国の福祉施設「マーガレット社会福祉会」の職員たち(左)

2024年5月24日 21:53(5月24日 22:26更新)北海道新聞どうしん電子版より転載