【北斗】道教大付属養護学校(現特別支援学校)の元教諭、高坂りゅう子さん(2023年に88歳で死去)が立ち上げた「やすらぎの家」(市千代田)が、開設から四半世紀にわたり、同校卒業生たちの憩いの場になっている。毎週日曜日に卒業生や元教諭ら15人ほどが集まり、昼食を食べて交流。40~60代になった卒業生たちは「ここに来るのがいつも楽しみ」と話し、支える元教諭らも活動にさらなる意欲をみせている。
 「畑の作業を間違えると、高坂先生に『違うっしょ』って怒られたよ」「懐かしいよね」。19日正午、やすらぎの家で、卒業生の男性8人と、運営を担う元教諭やボランティアのメンバーが昼食を食べながら歓談していた。この日のメニューはカレー、サラダ、酢の物など。午前中は畑に豆の種をまき、食後は家の中でカラオケを楽しんだ。七飯町から通う男性(57)は「皆に会うと、元気が出る。先生には『ここを残してくれて、ありがとう』と伝えたい」と話した。
 やすらぎの家は2000年に活動をスタート。当初は市一本木の民家を借り、13年9月に現在の一軒家に移転した。ビニールハウス2棟と畑もあり、イチゴやトマト、豆などを栽培。月2回は地域の温泉に行き、餅つきや花見も行う。日曜の活動時間帯は午前9時半~午後3時半だが「いつでも、誰でも自由に利用できる家」がモットーで、好きな時に来ても良い。
 高坂さんは長年、知的障害のある児童生徒の教育に携わり、同校教諭を退職後にやすらぎの家を開設。その後、運営するNPO法人を設立した。同校を卒業後、福祉事業所などで働く教え子たちに、楽しく、余暇を過ごす場が必要だと感じていたという。元同校教諭で、現在の運営を担当する菅原美代子さんは「仕事と家の往復になってしまう卒業生も多い。ここに来て、とにかくおなかいっぱい食べて、1週間働く元気を養ってもらいたいと高坂先生は考えていたし、これからもそういう場でありたい」と話す。
 食費や運営費はNPOの会費や寄付でまかない、ボランティアも活動を支える。4年前から食事作りなどを手伝っている函館市の阿部恵美子さん(72)は小学生の頃、高坂さんが6年間、担任だった。放課後は自宅を開放し「好きに遊びなさい」と言ってくれる先生だったといい「今の活動が少しでも恩返しになれば」と言う。やすらぎの家の近所に住んでおり、開設当初からボランティアとして参加する井手幸子さん(88)は高坂さんの同級生で「何だか毎週、ここに来ちゃうんだよね」と笑った。
 高坂さんは1995年に、余暇活動として同校卒業生のバスケットボールクラブも立ち上げており、こちらも活動が続いている。現在は同校だけでなく、道南の複数の支援学校の卒業生で構成し、メンバーは20~30代の15人。月1回、金曜日の夜に市総合福祉センターで練習し、障害者スポーツ大会への出場を目指している。付属特別支援学校在学中にクラブに入り、現在は森町で働く男性(23)は「仕事のリフレッシュになるので、欠かさず通っている」と楽しそうだ。
 クラブのコーチも務める菅原さんは「皆が『活動があって良かった』と言ってくれて、とてもうれしいし、私たちも楽しくて続けている。楽しい時間を増やす活動をこれからも続けたい」と力を込める。

やすらぎの家で昼食を食べる支援学校の卒業生たち。部屋の奥には高坂さんの写真が飾ってある=19日

2024年5月21日 19:41北海道新聞どうしん電子版より転載