旭川市は、認知症の高齢者が徘徊(はいかい)や失踪した際にスマートフォンやタブレット端末で情報共有し、捜索を支援する「地域見守りアプリ」の開発を進めている。名前や連絡先、顔写真などの情報を事前に登録しておき、行方が分からなくなった場合、捜索協力者に通知する仕組み。従来行っていた電話やファクスよりも情報共有が正確で迅速になる利点がある。市は今夏にも試験運用を始める。
 アプリは、市が昨年度から一般社団法人セーフティネットリンケージ(札幌)と共同で開発し、認知症の高齢者やその家族らの利用を想定している。市によると、認知症の高齢者が行方不明になった通報件数は、2021年度が77人(うち未発見3人、死亡1人)、22年度が58人(うち未発見ゼロ、死亡3人)だった。
 利用者が捜索依頼を出すと、管理者である市がアプリ内でチャットを立ち上げる。捜索にかかわる包括支援センター職員や町内会、ボランティアらで情報を共有し、文章や写真などをリアルタイムでやりとりする。個人情報の流出を防ぐため、捜索が終わると、チャットで共有した情報は市が閲覧できなくする。
 高齢者が失踪した場合は、一般的に警察から提供された情報を、関係機関に電話やファクスで共有する体制がとられており、関係者が捜索を始めるまでに時間がかかることが課題だ。
 徘徊や失踪の恐れある人に発信器付きの端末を持ち歩いてもらったり、首下げ式の名札を身に着けてもらったりする方法もあるが、本人や家族が望まないケースが少なくない。
 市地域活動推進課は「アプリの活用を通じてスムーズな捜索につなげるとともに、見守る人を増やすことで年を重ねても安心して暮らせる地域づくりを進めたい」としている。

2024年5月20日 18:13(5月20日 19:19更新)北海道新聞どうしん電子版より転載