全国の障害者向けグループホーム(GH)のうち、結婚や出産、子育てに関する相談支援や自立支援を実施しているのは1割程度にとどまることが18日、厚生労働省の委託調査で分かった。過去約2年間で実際に出産や育児を支援した事例があったのは3%だけだった。

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害者のグループホームが結婚や出産、子育てについて実施している主な支援


 調査は、北海道のGHで知的障害者が不妊処置を受けていたことが2022年に発覚したことを受け、実施された。厚労省によるこうした調査は初めてとみられる。障害者の結婚や育児に対する支援が全国的に見ても手薄であることが、改めて浮き彫りとなった。
 調査は厚労省の委託先のPwCコンサルティングが昨年12月、全国のGH2600カ所を対象に実施。300カ所から回答を得た。入居対象の主な障害種別は知的障害が70%で、精神、身体と続いた。
 結婚・同棲や妊娠・出産、子育てについて実施していることを選択肢(複数回答)で尋ねると、相談支援は15%、性に関する情報提供・助言は14%、社会的・経済的な自立のための支援は9%にとどまった。各種サービスや支援機関への連絡・付き添い、手続きの支援は29%が挙げた。
 22年4月から調査時点まで2年弱の間に入居者から実際に相談があったGHは、妊娠・出産についてが5%、子育ては4%。支援した例があったのは、いずれについても3%だった。
 全国1741市区町村の障害福祉部局、母子保健・育児支援部局にも調査を実施(回収率はどちらも約40%)。障害部局の32%、母子保健部局の23%は障害者の結婚や子育てについて支援を実施していないと答えた。
 課題を聞くと「障害者の子育てを支える体制が乏しい」「性教育を行う機会や人材の不足」「支援のノウハウが乏しく、どのような対応をすべきか分からない」といった意見が多かった。
 厚労省はこれを踏まえ、24年度に知的障害者や支援者向けの情報提供に乗り出す考えだ。

2024年5月18日 17:30(5月18日 19:49更新)北海道新聞どうしん電子版より転載