十勝管内の医療・福祉従事者らが、障害や病気がある当事者の日常生活を支援する任意団体「とかちCAST(キャスト)」(黒柳弘美代表)を帯広市内に設立した。タブレット端末に入力機器を外付けし、体が不自由な人でも操作できる方法を普及するなど、誰もが意思疎通が可能な社会を目指す。11日には活動の周知を兼ねた研修会を市内で開いた。
 市内で相談支援事業所を営む合同会社ミライリス代表で、神経難病者の支援も行う黒柳代表が中心となり、今年2月に6人で発足。障害がある人向けの機器の研究・開発を進める東京慈恵医大の協力も得た。
 iPad(アイパッド)に標準搭載されたアクセシビリティ(利用しやすさ)機能を活用し、視線入力装置や押しボタン式のスイッチなど当事者に適した装置を取り付けて、単純な動作のみで通信アプリLINE(ライン)を使ったり、スマート家電を動かしたりする方法を普及啓発していく。
 11日の研修会には東京慈恵医大の訪問研究員、高橋宜盟さんも参加。実演で画面に表示されたボタンをタッチすると、「今この声は『指電話』を使って話しています。iPad(アイパッド)で使うコミュニケーションツールです」と合成音声が流れ、一言も話さず自己紹介した。
 活動は、日常生活で電気を付ける操作なども他者に頼まないといけないなど、当事者が抱えるストレスや苦悩を軽減する狙い。黒柳代表は「やりたいことができないという障壁をなくしたい」と話す。
 当面、団体のメンバー間での勉強会や、当事者と保護者を対象にした研修を実施する。今後、これらの機器を実際に体験できるモデルルームを市内の地域複合施設「つがハウス」(西9南9)に設置することを検討。当事者の状態や症状に合わせた入力装置の製作にも取り組みたい考えだ。

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研修会で視線入力装置を使ってタブレット端末の操作を体験する参加者

2024年5月17日 18:50(5月17日 19:50更新)北海道新聞どうしん電子版より転載