筋力や免疫力の維持に欠かせないタンパク質。高齢者のフレイル(虚弱)対策を機に近年、摂取の大切さがあらためて認識されている。では実際、普段の食材にはどの程度含まれ、不足する場合はどう補うとよいのだろうか。にれの杜クリニック(札幌)栄養科科長で道栄養士会会員の奥田絵美さん(43)に聞いた。
 「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)では、総エネルギー量に占めるタンパク質の割合について、13~20%(65歳以上は15~20%)を目標としている。標準的な活動量の場合、年齢に応じて成人男性は1日78.8~91グラム、成人女性は61.9~69.4グラム以上が求められる=表1=。
 ただし、腎臓に疾患のある人は、タンパク質の取りすぎに注意する必要がある。「個々人の体格や活動量によっても変わってきます」と奥田さんは言う。
 

 タンパク質が不足している場合、手軽に補うにはどう工夫すると良いか、記者の休日の食事を例に助言してもらった。
 朝食はご飯、納豆、みそ汁(タンパク質は10.8グラム)。昼食はスパゲティとサラダ(同24.4グラム)。夕食はご飯と肉じゃが(同19.1グラム)。タンパク質は合計54.3グラムだった。「昼食に牛乳を添えているのは良いと思います」と奥田さん。
 40代女性の記者は表に照らすと66.6グラムが目標値となる。体格を考慮して70グラムを目指すと、約16グラム不足していたことになる。
 奥田さんが勧めるのは、冷凍野菜の活用だ。朝食にゆでブロッコリー、夕食にホウレンソウのおかか和えをプラスする。緑黄色野菜には意外にもタンパク質が含まれる=表2=。「かつお節も多めにかけると良い」と勧める。
 さらに納豆を1パック30グラムのミニサイズから、50グラムの通常サイズに変更し、冷奴を加えると、タンパク質は71.4グラムとなり、目標に達した。「納豆に生卵を加えるのも手軽です」

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 タンパク質は体内に貯蔵されず、余剰分は排出されるため、3食それぞれで一定量を取るのが理想的。特に朝食で取ると、朝は筋肉の合成に必要なインスリンの働きが良いことなどから、筋力の維持・増加に効果が高いことが近年の研究で分かってきたという。
 朝食が「パンとコーヒー」「ご飯と納豆」など軽めの人は「ゆで卵や冷奴、ツナ缶などをプラスしましょう」と奥田さん。コーンスープにも、タンパク質が多く含まれるタイプのものがある。昼食がうどんやそばなど麺類のみの場合は、鶏肉や豚肉などの肉類、卵を加える。「スパゲティには冷凍のベーコンやシーフードミックスを加えると簡単にタンパク質を増やせます」。おやつにはプリンやヨーグルトが良いという。
 タンパク質には一方で、体内のエネルギーが不足していると、エネルギー源として活用されてしまうという性質がある。「タンパク質だけしっかり取っても、十分なエネルギーが取れていないと筋肉にはなりません」と奥田さん。エネルギーになる炭水化物や脂質などもバランス良く取ることが大切だ。
 また、高齢になると代謝が低下し、タンパク質を効率的に筋肉に変える力が弱まる。奥田さんは「動物性食品(肉や魚、卵、乳製品)と大豆製品のタンパク質には、体に不可欠な『必須アミノ酸』が多く含まれ、効率良く筋肉に変えることができる。意識して食事に取り入れると良いでしょう」と助言している。

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2024年5月17日 5:00北海道新聞どうしん電子版より転載