短大の募集停止ドミノが止まらない。四年制大の進学率上昇を背景に、道内の短大はピークの1987~89年度の31校から、2023年度は13校に減少した。短大は保育士や介護福祉士の養成校の側面も持ち、地域社会を維持する人材の育成に欠かせない存在だ。こうした短大を維持するために今後は、規模を縮小してでも運営できる仕組みづくりが必要ではないか。
 2月、北星学園大短期大学部(札幌市厚別区)が25年度に学生募集を停止すると発表した。その1週間後に拓殖大北海道短期大学(深川市)が同年度の保育学科の募集停止を明らかにした。
 短大は短期間で高度な専門職業教育を受けられる機関として戦後、主に女性の進路先に選ばれてきた。しかし、女性の四年制大進学率の上昇とともに、短大への進学者は激減した。
 リクルート進学総研によると、道内の短大進学者は13年の2422人から、23年は1187人へ49%減少した。一方、大学進学者は10年間で1万5737人から1万7603人へ12%増加しており、四年制大志向が高まっている。
 22年度に札幌大女子短期大学部(札幌市豊平区)を募集停止した学校法人札幌大学の荒川裕生理事長は「18歳人口が減少する中、限られた経営資源で大学を持続させるために、重荷になっていた短大は見直さないといけなかった」と苦渋の表情で語った。
 実践的な職業能力を身に付けたい人は専門学校へ、より学問を追究したい学生は四年制大へ進み、短大は立ち位置を見いだせずにいた。23年度の道内高卒者の進学率は、四年制大が48.1%、専門学校は23.0%に対し、短大は3.2%で低迷している。18歳人口が減少し、大学全入時代が迫る中、短大の募集停止は今後も続くとみられる。
 忘れてはならないのが、短大は地域を支えるエッセンシャルワーカーを養成していることだ。道内の多くの短大に保育士や介護福祉士、栄養士の資格取得を目指せる学科がある。いずれも地元就職率が高く、釧路短期大(釧路市)では幼児教育学科の卒業生の8割が釧路管内に就職している。
 十勝管内には保育士や幼稚園教諭を養成する機関が帯広大谷短期大(音更町)しかない。地域から短大がなくなれば子育てや介護を支える担い手が減り、さらなる人口減につながる。
 3月まで帯大谷短大の学長を務めた田中厚一さん(65)は「短大生は地域貢献への思いが人一倍強いのに、地元の高校や企業は四年制大を重視しがちだ」と指摘する。「短大生の思いを受け止め、評価できる地域社会であってほしい」と望む。
 17年から約2年間赴任した滝川支局で、道外出身者の多い国学院大北海道短期大学部(滝川)の学生が、無人駅のJR江部乙駅で地域住民と一緒にカフェを開いたり、清掃活動をしたりする様子を取材した。高齢化が進む地域にとって重要な存在だと実感した。
 ただ、短大への支援は十分とは言いがたい。23年度に国から交付された私立大学等経常費補助金は1校あたり四年制大の4億8713万円に対し、短期大学は4846万円と10分の1にとどまる。額は学生数や収容定員の充足率に応じて決まるが、短大教員からは「地方の短大はつぶれても良いということか」と恨み節が聞かれる。
 短大側も高卒者のニーズに見合った学科編成が求められている。北海道武蔵女子短期大(札幌市北区)を運営する学校法人北海道武蔵女子学園は4月、四年制の武蔵女子大を短大と同じキャンパスに開学した。開設した経営学部はマーケティングや心理学を横断的に取り入れながら、実社会で役立つ知識とスキルを教えている。短大も維持し、経済的理由などで短大を志望する学生に学びの選択肢を残している。
 リスキリング(学び直し)が注目される今、短大は若者や定年退職者が資格取得、仕事のスキルアップを目指し、学べる高等教育機関であってほしい。2年間なら短く、学費も安く抑えられる。短大が蓄積してきた少人数教育や地域密着型の授業が生きるはずだ。
 19年から3年間赴任した旭川報道部では、旭川大(現旭川市立大)短期大学部の教員から「大学だけでなく短大も記事で取り上げてほしい」と言われてきた。今ならその言葉の重みが分かる。まずは身近な短大に目を向け、地域一丸で短大の未来を考えることが重要だ。

2024年5月12日 10:02北海道新聞どうしん電子版より転載