道は、今後の人口減対策の基礎資料となる人口動態などに関する調査報告書をまとめた。政府の統計や道民の意識調査を分析し、全国と比べて30代女性の出生率の低いことが人口減の大きな要因とした。雇用環境の改善や産業立地の強化を課題に挙げており、本年度に策定を予定する道の人口減対策の指針である次期創生総合戦略に取り組むべき施策などを反映させる。
 報告書によると、道内では2003年以降、出生数が死亡数を下回る「自然減」が続いている。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数である合計特殊出生率は、22年で全国平均の1.26に対し、道内は1.12と都道府県別で下から2番目に低い。年齢別では、道内は27歳まで全国平均を上回るが、30歳以降に大きく下がっている。
 全国の都市と比較可能な20年の統計でみると、札幌市の出生率は1.09と政令市で最低。東京都区部や福岡市が30代後半から出生率が全国平均を上回るのに対し、札幌は同様の傾向がなく、夫婦や女性の経済状況が比較的安定する高年齢層で出生率が上昇する「キャッチアップ現象」がみられないという特徴があった。
 道内からの人口流出は、23年は5万8千人が道外に転出し、このうち15~24歳が3割を占めた。

こうした現状の背景を探るため、道は各種の意識調査を分析。札幌市の22年度の市民アンケートでは、実際の子どもの数が希望より少ない世帯が4割を占め、理由に「経済的な負担が増える」と答えた世帯が最多だった。道の23年の道民意識調査では、生活の満足度が最も低い項目に「収入や家庭」と答えた人が多く、特に30代での回答が目立った。家計への不安が30代の出生率低迷に影響していることがうかがえる。
 一方、道の今年2月のウェブ調査では、首都圏に転出した18~39歳の500人のうち約半数が、道内に「戻りたい」と希望。ただ、「給与が低い」ため「現実的に難しい」とする人が多く、習得した専門知識や技能を生かせる仕事が道内にないことを要因に挙げた。
 これらの分析を踏まえ、道は報告書で30代が子どもを産み育てられる環境を整えることが重要と指摘。若者の給与を向上させ、就職先の選択肢を増やすため「半導体関連産業をはじめとした北海道の特性を生かした産業の立地が必要」などの方向性を示した。
 道地域戦略課は「人口減少は難しい課題だが、分析を生かして効果的な政策につなげたい」としている。

2024年5月11日 21:06北海道新聞どうしん電子版より転載