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脂肪は肥満のもとと考えられがちですが、重要な栄養素であり、貯蔵に適したエネルギー源です。例えば、多めに摂取した糖質は、そのまま体にためるのではなく、肝臓で糖質を脂肪に変換して、その脂肪を全身の脂肪組織に分配して蓄えます。そして、エネルギーが必要な時は、脂肪を取り出して、全身のさまざまな場所で、エネルギー源とします。つまり、脂肪は全身を目まぐるしく移動しているのです。
 脂肪を血流に乗せて移動させるわけですが、脂肪は水である血液に単純に入れても溶けるわけではありません。「あぶら」である脂肪は水に浮いてしまい、細い血管に詰まってしまうかもしれないのです。
 そこで、脂肪をタンパク質と結合して、水の中に溶け込ませる方法をとります。この脂肪と結合しているタンパク質をリポタンパクといいます。同じしくみになっているのが牛乳です。牛乳には乳脂肪とタンパク質が含まれていますが、お互いに結合しているので、牛乳はサラサラとして、「あぶら」が浮いたりしていません。
 リポタンパクは脂肪の輸送に欠かせないものです。肝臓から脂肪組織に脂肪を運ぶリポタンパクをLDLといいます。そして、脂肪組織から取り出して全身に配るのがHDLです。そして、過食になると、肝臓で作る脂肪の量が増え、それを輸送するためにLDLが増えてしまいます。血液検査でLDLに含まれるコレステロールを測定しますが、その値にはこういう意味があるのです。(當瀬規嗣=とうせ・のりつぐ、道文教大教授、札医大名誉教授)

2024年5月8日 5:00北海道新聞どうしん電子版より転載