【芽室】公立芽室病院は、看護師が病室や廊下など患者の近くで仕事をする「セル看護提供方式」を導入した。入院中の患者の安心感につなげつつ、業務効率を上げて看護師の残業時間削減を図る。3月から一部病棟で導入し、来年4月の全面的な運用を目指す。
 4月中旬、患者のベッドについたセンサーが反応して音が鳴り出すと、廊下で仕事をしていた看護師が立ち上がり、病室に入った。患者の様子を見た後、同じ病室担当の看護師と「問題ないね」と確認しあい、元の仕事に戻った。
 同方式では、看護師は数人で1組となり、パソコンや看護用の器具をワゴンに載せ、病室や廊下を拠点に事務作業をする。従来は看護が終わるとナースステーションに戻り、ナースコールなどが鳴る度に走ってナースステーションと病室の間を往復していた。
 同病院の患者の平均年齢は85.7歳。転倒予防などからベッドには動くと音が鳴るセンサーがついており、患者が立ち上がろうとするとセンサーが鳴り、看護師が駆けつける。患者にとっては「立ちたいだけなのにダメなのか」という不満、看護師にとっては忙しさや患者の行動を制限する心苦しさの原因になっていた。
 導入後、そばに看護師がいる安心感から患者が動いてセンサーが鳴ることやナースコールの回数が大幅に減った。鳴ってもすぐに確認できるため仕事がはかどり、導入した病棟では残業がほぼなくなったという。
 同方式は、福岡県にある民間の飯塚病院が開発し、道内では砂川市立病院がいち早く導入した。業務効率を上げたいと考えていた公立芽室病院の看護師長らが昨年12月、砂川市立病院を見学し、準備を進めた。
 公立芽室病院では、回復期や慢性期の患者47人が入院する病棟から導入を開始。今後、一般急性期の病棟にも導入したい考えだ。岡山有美子総看護師長は「これから高齢者はさらに増えていく。高齢者に優しく、地域に選ばれる病院にしていきたい」と話している。

患者のそばで様子を見守りながら仕事を進める看護師

2024年5月2日 22:18(5月2日 22:18更新)北海道新聞どうしん電子版より転載