【伊達】社会福祉事務所エイド(梅本町)の福士憲昭代表(74)が、障害者や高齢者などの福祉施設で相次ぐ虐待事件や事故などの原因について分析し、防止策などを提言する書籍「福祉施設の事故や虐待はなぜ防げないのか」を出版した。市内の知的障害者総合援護施設「太陽の園」をはじめ、道内各地の福祉施設で施設長を務めた経験を基に構成。福士さんは「少しでも福祉業界に関係する人たちのお役に立てれば」と話している。
 福士さんは旭川市出身。1974年3月に明治学院大社会学部を卒業後、北海道社会福祉事業団に入り、道内の各施設で勤務。2000年には、職員による傷害事件が発生した上川管内南富良野町の知的障害者更生施設の立て直しのため、同施設の施設長に就任した。以後、太陽の園や、後志管内黒松内町の2施設で、現場の責任者を務めた。
■施設職員向けの「所感」に加筆
 今回の書籍は、施設長として職員向けに発行していた「所感」を基に最近の事情などを加筆した。「入所者に起こりがちな事件・事故」「あってはならない職員の事件」など5章に分けて再構成。太陽の園で08年に発生した男児の行方不明事案をはじめ、死亡事故や虐待、職員の着服など、自身の体験や考え、道内外の各施設での現状などについて系統的にまとめた。
 出版の動機について、福士さんは「施設での虐待事案が一向に減らない状況に憤りを感じていた。私の経験が何か役に立たないかと思った」と説明。書き残していた所感を一昨年の12月に、文芸社(東京)に持ち込んだところ、編集者たちから高く評価され、編集作業を続けてきた。
 書籍では、施設勤務時代に取り組んできた施設利用者の権利擁護についても1章を設け、成年後見制度の利用促進を呼び掛けている。
 また、人手不足の解消策として、夜間専門の事業所の認可や、高齢者雇用なども提言。福士さんは「1人でも多くの人に読んでもらえれば」と話している。
 四六判、171ページ。初版千部発行で、1320円。市役所や、市内の福祉施設、道内の図書館などに寄贈したほか、通販で購入可能。

2024年2月29日 19:10(2月29日 19:33更新)北海道新聞どうしん電子版より転載