人口戦略会議が24日に公表した報告書で「消滅可能性自治体」に該当するとされたのは、道内117市町村に上った。中でも石狩管内当別町と歌志内市は人口減少が「特に深刻」とされ、住民や自治体関係者に落胆が広がった。一方、前回2014年発表で消滅の可能性が指摘された十勝管内上士幌町など37市町村は脱却。ただ、若者が首都圏や札幌に流出する構図は変わらず、多くの自治体から国に抜本的な対策を求める声が上がった。
■「人通りない」
 「人通りが全然なく商売にならない」。当別町のJR当別駅に近い本通商店街で薬局兼商店を営む片岡芳仁さん(69)はため息交じりに語った。かつては買い物客や若者らでにぎわった商店街は今、シャッターが目立つ。片岡さんは「40年前は店を開ければどんどん客が来たが、今はそうではない。『消滅可能性』と言われると、本当に消えてしまう気がする」と危機感を募らせる。
 人口戦略会議は、子どもを産む中心の年代となる20~39歳の女性が20年から50年までに50%以上減ると推計される自治体を「消滅可能性自治体」とした。
 当別町は50年の若年女性人口が20年の1300人から360人に減るとされ、減少率は72.3%に達する。町内の北海道医療大は28年に北広島市に移転する予定で、人口減少がさらに加速する可能性がある。
 今回の分析では、消滅可能性自治体のうち全国23自治体が特に人口減が深刻とされ、「自然減と社会減の両方の対策が極めて必要」と指摘された。道内からは当別町と歌志内市が入った。
 歌志内市の若年女性の減少率は86.7%と道内で最も高かった。同市は、合計特殊出生率(18~22年)が1.16と全道平均を0.05ポイント下回っており、自然減も進む。担当者は「人口減に全く歯止めがかかっていない」と語る。
■9割が管外へ
 総務省によると、23年に道内から道外に転出したのは5万8千人。うち3割が15~24歳で、若者が大学進学や就職で道外に流出する傾向が続いている。
 消滅可能性自治体とされた釧路市の釧路江南高の進路指導担当者は「大学進学となると札幌や本州に出てしまう。卒業後も若者が戻ってこない」と話す。釧路管内の四年制大学は2校で、同高では今春に大学進学した117人のうち釧路市の2校への入学は計15人。同管内全体でも大学進学者の9割が管外に流出する。
 今回の分析では、新たに登別市や後志管内京極町など9市町村が消滅可能性自治体となった。このうち北斗市は、前回から若年女性の減少率が16.3ポイント悪化。市内の企業で人手不足が始まっていることから、21年に若年層の呼び戻しと定住を目的に、市内に居住して地元企業に就職した人の奨学金の返還を一部補助する事業などを開始したが、効果は現れていない。担当者は「道南全域で人口が減っている流れにはあらがえていない」と話す。

シャッターが目立ち、人通りがまばらな当別町本通商店街。当別町は消滅可能性自治体の中でも「特に深刻」と指摘された=24日(浜本道夫撮影)
■独自の施策も
 一方、独自の政策が奏功し人口維持の流れをつくりつつある自治体もある。十勝管内上士幌町は若年女性の減少率が39.1ポイント改善し、消滅可能性自治体から脱却した。08年から移住者向け住宅の建設費を補助するなどいち早く移住促進や子育て支援に力を入れ、東京や大阪から子育て世帯が移り住んでいる。21年まで6年連続で社会増を記録し、23年も転入者が転出者を23人上回った。
 国際リゾート・ニセコ地域の中核である後志管内倶知安町も消滅可能性自治体から脱却した。外国人の定住増が要因の一つで、町内在住外国人は今年1月末時点で前年から千人以上増の2800人となった。日本人と結婚し出産・子育てするケースも多く、文字一志町長は「北海道新幹線の新駅や高速道路が整備されるので、こうした状況を生かすまちづくりを続けたい」。
 ただ、道内では179市町村の65%超が消滅可能性自治体に該当し、全国的に人口減少が著しい地域とされた。道南のある自治体幹部は「個別のマチの努力では近隣から人を引っ張るのが精いっぱい。国が首都圏への一極集中是正に本腰を入れない限り状況は解決しない」と強調した。2024年4月24日 23:52北海道新聞どうしん電子版より転載