道内2例目となる私大を公立化して誕生した旭川市立大が4月、開設1周年を迎えた。私立時代には定員割れが続いたが、2年連続で大学(定員200人)と短大(同150人)は、定員に占める入学者の割合を示す「定員充足率」が軒並み100%を超えた。ただ地元の旭川市と上川中部8町の入学割合は7割から5割に減少し、卒業生の地元離れも懸念される。市立大は2026年度の新学部開設を目指すなど入試改革を進める。
 今月3日、入学式が旭川市民文化会館で開かれ、2期生が入り口横で記念撮影待ちの行列をつくった。保健福祉学部に入学した胆振管内むかわ町の大浦唯奈さん(18)は「学費の安い公立で福祉を学びたかった。社会福祉士の資格を取り就職に役立てたい」と進学先に選んだ理由を語った。
 市立大の授業料は一律に年額53万5800円。私立旭川大時代に比べて4、5割安くなり、大学は2学部とも定員充足率は22年度から100%を超え、24年度も107%だった。短大の2学科は食物栄養学科(定員50人)が100%となり、幼児教育学科(同100人)は前年度比17人増の64人に。定員充足率は21年度までの6~9割から軒並み改善した。
 大学の受験生は23年度、定員200人に対して966人が殺到。24年度は540人と落ち着いたが、公立化前の21年度と比べて1.4倍となった。道内に加え、高校への訪問を実施した岩手県や青森県などで人気が高まる。入学者のうち地元1市8町の割合は、私立時代最後の22年度は短大を含め70・3%を占めたが、24年度は50・9%に減少。大学に限ると38・3%まで下がった。市立大の中期計画(23~28年度)で掲げる目標値「30%」以上は上回るものの、地元からの入学生確保は課題だ。
 公立化に伴い導入した推薦入試の地域枠「公募地域型」は地元受験生だけが受けられるが、経済学部と保健福祉学部コミュニティ福祉学科で2年連続の定員割れに。市立大によると、指定校推薦と異なり公募のため受験生が不合格を恐れて敬遠した可能性があるという。そこで旭川大時代にあった、地元受験生対象の指定校推薦を26年度入試から4年ぶりに「復活」させることを決定した。
 市立大は、私立時代を通じて若者の地元定着にも寄与してきた。23年度の卒業生のうち、1市8町で就職した割合は経済学部が54%、保健福祉学部看護学科が46%、同コミュニティ福祉学科が68%。私立時代に入学した地元出身者が多かったためだが、市立大キャリア支援課は「公立化の後に入った2年生が卒業する時は就職先が大きく変わるかも」とみている。
 26年開設を目指す新学部「地域創造学部」は、地域を舞台に課題解決に取り組む人材の育成を目指しており、地元への人材供給も期待される。市立大は今夏にも高校生や道内の企業を対象とした新学部への需要を調べ、25年3月までに文部科学省に設置認可を申請する方針だ。並行して教員を集める必要があり、準備期間は残り少ない。
 三上隆学長は地元の若者定着に向け「地域に密着した授業を地元企業や団体などと連携して取り組みたい。旭川の魅力が伝わり、地域への就職も選択肢の一つになる」とコメントした。

2024年4月18日 18:19(4月19日 9:34更新)北海道新聞どうしん電子版より転載

 

・旭川市立大、指定校推薦を導入 26年度から

 旭川市立大は2026年度入試から、旭川市や上川管内中部の高校を主な対象とする指定校推薦入試を導入する。現行の推薦入試の「公募地域型」は廃止。指定校推薦は、旭川大時代の22年度入試まで実施しており、4年ぶりの「復活」となる。
 新たに導入する学校推薦の「指定校制」は、一定の成績がある希望者が受験できる地域公募型と異なり、同大指定の高校が推薦した受験生のみを対象とする。指定校は上川管内中部1市8町の高校を中心とする考えで、定員や指定先は未定。全国から受験できる「公募全国型」は、「公募制」として残す。
 同大は市立化を契機に、競争率を高めることや指定校推薦を行う国公立大が少ないことを理由に23年度入試から公募地域型を開始。しかし、受験生が予定した定員に満たず、地元高校からの要望もあり指定校推薦の復活を決めた。
 同大入試広報課は「より地元の学生を受け入れ、地域を大事にしたい」と話している。

2024年4月12日 21:30北海道新聞どうしん電子版より転載