【厚真】町厚北地域防災コミュニティセンター「ならやま」で月1回開かれる「男子会」が、地域に暮らす高齢男性の心の支えになっている。町内の小納谷(こなや)武夫さん(87)がの山口純子さん(62)に相談し、昨年6月に始まった。参加者たちは思い出話に花を咲かせつつ、交流の輪をつないでいる。

町厚北地域防災コミュニティセンター「ならやま」で月1回開かれる男子会。小納谷さん(左から2人目)と山口さん(同3人目)の呼びかけで始まり、高齢男性の憩いの場になっている
 「この文字を並べ替えるとどんな言葉になるでしょう」。今月5日の男子会で、山口さんがカレンダーの裏側にばらばらに記したひらがなを見せながら、クイズを出した。参加した82~94歳の5人が「何だこりゃ」「分かんないな」などと笑うと、「あ、笑ったから1歳若返った」と山口さん。「そりゃあいいや」と全員が再び大声で笑った。
 男子会が始まったのは、小納谷さんが昨春、町内で約70年続けた畜産業をやめたのがきっかけ。3代目として家業を継ぐ予定だった長男に脳腫瘍がみつかり、治療のため町外へ。小納谷さんは1人で作業を続けられず、離農を余儀なくされた。それ以来「毎日をどう過ごせばいいのか分からなくなった」と感じていた時、知り合いに山口さんを紹介された。
 山口さんは2022年4月から、ならやま管理人と町の集落アドバイザーを務め、地域住民を見守ってきた。小納谷さんから「人と関わることがしたい」と聞いた山口さんは「同年代の人と話す機会をつくってみない」と提案。「男性同士の方が話しやすいかも」と2人で男子会の開催を口コミで呼びかけると、思いを同じくする高齢者が毎回5人ほど集まるようになった。
 ほぼ毎回参加する佐藤敏男さん(94)は「知り合いはほとんど他界しちゃってね。まちの昔話ができる場所ができて本当に楽しいよ」と話す。
 山口さんの呼びかけで、町社会福祉協議会やボランティア団体などの関係者が女性も含めて訪れる。町の保健師による健康相談会が開かれることもあり、昔話以外にも健康や食べ物など話題は尽きない。
 町内では、性別を問わず住民が集う「ふれあいサロン」も開かれている。運営を担当する町社協主査の丸山圭司さん(47)によると、参加者のうち男性は1~2割ほど。男性は参加してもあまり話さない人が多いことから「男子会では生き生きとしゃべっているのに驚いた」と話す。
 丸山さんは「高齢男性は寡黙で孤立しがち。気心の知れた仲間と話すことで安心感が生まれ、心身の健康につながる」と男子会の良さを評価する。
 現在は町が運営する高齢者向け住宅で暮らす小納谷さんは「みんなに支えられ、この会に救われた。僕たちにとっては集まって懐かしい話ができることが大事。これからも続けたい」とほほえんで語った。

2024年4月16日 21:39(4月16日 22:16更新)北海道新聞どうしん電子版より転載