札幌市は70歳以上が対象の敬老優待乗車証(敬老パス)の新制度への移行案について、市民から寄せられた意見を市ホームページ(HP)で公表した。60代以上からは移行反対の意見が目立ち、50代以下では将来の財政負担への懸念から賛成の声があった。

 札幌市、敬老パス巡り迷走 利用上限一律下げ一転、経過措置導入 関連予算案26日可決
 意見は昨年11月から今年2月末まで、市のHPとコールセンターで募集した。このほか昨年12月と今年1月に市内全10区で開いた意見交換会で受け付けた。
 居住区と年代を記載するHPへの意見は967件集まった。利用上限額を7万円から2万円に下げる新制度案について、60代以上からは「上限額が下がると外出を控えてしまう」など反対意見が相次いだ。一方、50代以下からは「財政的に見直しは妥当」など支持する声が上がった。コールセンターへの意見には居住区と年代はないが、1267件が集まった。
 意見は3月30日に公表。市保健福祉局は「意見をもとに制度の具体的な内容を検討する」としている。
 市は昨年11月、新制度案を発表。高齢者らから反発が相次ぎ、今年3月に3~5年程度の経過措置導入を表明した。

2024年4月1日 18:24(4月1日 20:48更新)北海道新聞どうしん電子版より転載

 

・札幌市、敬老パス巡り迷走 利用上限一律下げ一転、経過措置導入 関連予算案26日可決

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札幌市は、70歳以上の市民を対象に発行する敬老優待乗車証(敬老パス)の新制度移行問題を巡って、当初方針を一転させ、経過措置として2025年度以降も希望者に現行パスを交付する方針を示した。開会中の定例市議会での市の対応は終始「迷走」(自民党市議)したが、新制度の関連事業費を盛り込んだ新年度予算案が26日の市議会最終日に原案通り可決される見通しだ。これまでの経過と課題を改めてまとめた。

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敬老パスは最大で年間1万7千円負担すると、7万円分まで市営地下鉄やバス、路面電車(市電)に乗れる制度。1974年度に高齢者の社会参加を促す目的で無料で始まった。05年度からは財政負担軽減のため同1万円の自己負担で5万円分まで乗れるように、09年度から現在の自己負担額となった。
 高齢化による対象者増で市の公費負担は増加傾向にあり、05年度の約21億円から23年度は約50億円と約2.4倍に増えた。札幌の敬老パスと同様の制度は道外の政令指定都市で見直しが進む。浜松市は17年度、広島市は20年度に廃止。京都市は対象年齢を引き上げて財政支出を減らした。

■新制度にはポイント
 「高齢化がさらに進み、現行制度の維持は将来世代の負担増につながる」(市幹部)。こうした懸念から市は昨年11月に、敬老パスの利用上限を2万円に引き下げると発表した。同時に、歩数などに応じてポイントを与える新制度を打ち出した。
 健康寿命の延伸を目的とした新制度は、スマートフォンの専用アプリを使い、歩数や認知症予防講座への参加などを通じて、ポイントが付与される仕組み。1ポイントは1円分。これまで使えなかったJRやタクシーも含む交通機関で利用でき、電子マネーにチャージできて買い物も可能とし、市は利便性が高いと強調する。

■高齢者の反発相次ぐ
 「敬老パスと健康増進は別の話だ」「歩いてポイントをもらう制度にすると、活動できない高齢者は切り捨てられる」。市が1月下旬開催した新制度に関する意見交換会で、出席した高齢者からは新制度移行に批判的な声が多く上がった。
 高齢者らの反発を受け、市は今月8日の市議会予算特別委員会で、25年度以降も希望者に現行パスを交付する経過措置を設ける考えを表明。しかし、秋元克広市長は13日の定例記者会見で、経過措置を「3~5年程度」設けると明らかにした一方、利用上限額の引き下げや自己負担額の増額に関する具体案を示さなかった。

 25年秋ごろから現行パスと新制度を選択でき、26年度以降に70歳になる市民は新制度のみ対象となる見通しだが、高齢者にとって分かりにくい状況が続いている。
 新制度導入を前提にしたアプリ開発費7億2600万円が盛り込まれた新年度予算案は、26日の市議会最終日に可決される見通し。今回の予算計上について、市は「25年度からの新制度運用に向けてアプリ開発費は必須」としている。経過措置に関する費用などは新年度予算案には含まれていない。

2024年3月25日 22:27(3月26日 8:08更新)北海道新聞どうしん電子版より転載