小林製薬の「紅こうじ」の成分を使ったサプリメントを巡る問題では、摂取後に腎疾患を引き起こすケースが多数報告されている。厚生労働省は29日「プベルル酸」という化合物が検出されたと明らかにした。腎臓は血液中の老廃物や塩分をろ過し、体外に尿として排出する「浄化槽」。専門家は「有害物質がたまりやすい」と指摘する。特に細い管が複雑に折れ曲がった形をした腎臓内の「尿細管」に障害が起きた症例が相次いでいる。
 「(原因は)サプリが一番濃厚だ」。富士市立中央病院(静岡県)の医師が28日、取材に答えた。この病院では2人が吐き気などを訴え入院。いずれも診断は「尿細管障害が原因の急性腎障害」だった。持病はなく、半年ほど前からサプリを摂取。うち1人は退院後に摂取を再開したところ、再び急性腎障害を発症、入院したという。
 腎臓に入った血液は、毛細血管が毛糸を丸めたようになった構造の「糸球体」でろ過。尿細管で水分や栄養素、ミネラルなどが体内に再吸収され、老廃物を含む残りが尿として排出される。
 腎臓のこうした働きで、体内の水分量が一定となり、ミネラルバランスも調整される。1分間で100ミリリットルほどの血液がろ過され、99%の水分は再吸収されて、尿約1ミリリットルが排出されるという。
 ひらくクリニック(東京都)の吉田啓院長(腎臓内科)は「腎臓は血液中のさまざまな成分を受け止めるため、薬剤や有害物質などの濃度も高まる」と話す。薬の副作用なども出やすいという。
 尿細管の機能が低下すると、尿がたくさん出る多尿状態になり、ミネラルバランスに異常をきたす。重症化すると尿が出なくなることもある。ひらくクリニックには29日、サプリを約1年半前から飲み、食欲不振や尿が泡立つ症状を訴える40代女性が受診。尿細管障害の疑いと診断された。
 吉田院長は「腎臓の数値に問題がなければ過度に心配する必要はないが、腎疾患は自覚症状が出づらい。気になる場合は医療機関を受診してほしい」と話す。
 日本腎臓学会は27日から全国の会員医師を対象に、健康被害が疑われる患者の受診の有無などを調べるインターネット調査を始めた。学会の南学正臣理事長は早期の中間報告を検討しているといい「なるべく早く診療現場に役立つ情報を提供したい」と話した。

2024年3月29日 19:24(3月29日 19:54更新)北海道新聞どうしん電子版より転載