労働災害が全国的に増える中、イオン北海道(札幌)は、全国の企業や団体の優れた労災防止策などを表彰する「SAFE(セーフ)コンソーシアムアワード」に2022年度と23年度に2年連続で入賞。特に23年度はコンソーシアムの先進事例を導入してけが防止の安全靴を従業員に配るなど、コンソーシアムを通じた労働安全対策が道内企業に広がりつつある。
 コンソーシアムは安全・安心な職場づくりを目指し厚生労働省が22年に設立し、国内1520の企業、団体が参加。毎年、すぐれた事例をアワードで表彰している。
 イオン北海道は23年度、「セーフティシューズで安全・安心!」と「全員参加のヒヤリハット!」の二つの取り組みが、安全な職場づくり部門で北海道・東北のブロック賞に選出された。「セーフティシューズ-」は商品を売り場などに運ぶ際、運搬用の台車でけがをしないよう、足先を樹脂加工で保護したワークシューズを従業員に支給した取り組みだ。
 参考にしたのは、22年度のアワードの企業等間連携部門で最高のゴールド賞だった、スポーツメーカー・ミズノと関東の食品スーパーチェーンの事例。スーパーの従業員がミズノで製造された足先に芯を入れたワークシューズを使ったところ、台車の巻き込みや転倒事故が減少した。


足先部分に樹脂を用いて固くした安全靴を手にする、イオン北海道の人事教育部の村上道昭さん

 

 イオン北海道は昨冬に一部の店舗で同様の靴を導入したところ好評だったため、道内127店舗のほぼすべての計3500人に支給し、事故を半減させたという。
 「全員参加の―」は道内2店舗で実施。全従業員にアンケートを行い、店内で転倒などけがをしやすい場所について注意を促すステッカーを貼った。
 イオン北海道は22年度には「冬のゼロ災運動」が転倒災害防止部門の上位2番目のシルバー賞に選ばれた。前年度の転倒災害の発生場所、時間、年齢などを調べてポスターで周知した内容。この取り組みがアワードを受賞したことを知った道内の小売業から問い合わせがあった。
 イオン北海道人事教育部の村上道昭さん(41)は「アワードを通じて先進事例を知ることができ勉強になる。さらに私たちの活動も他社に知られて参考にされ、従業員の安全が高まったらうれしい」と手応えを感じている。
■増加目立つ福祉施設、小売業


 北海道労働局によると、道内の労働災害の死傷者数(死者と4日以上の休業者)は、2022年が7183人、23年(2月末速報値)は7115人。15年(6568人)と比べると600人程度増加。60歳以上の割合が増え、00年は14.4%だったが、13年で24.7%、22年は30.9%だった=グラフ1=。全国でも死傷者数は09年が11万4152人、うち60歳以上は19.1%。22年は死傷者数13万2355人、60歳以上は28.7%だ。
 高齢化だけでなく、第3次産業の労災事故の増加も要因の一つだ。全国の過去10年の労災発生件数=グラフ2=を見ると、製造業、建設業は横ばいか減少傾向。第3次産業については、社会福祉施設、小売業で転倒事故などが増え、労災件数が右肩上がりとなっている。
 厚生労働省は、23年度から5年間の「第14次労働災害防止計画」で、中高年女性に多い転倒の防止や高年齢労働者に配慮した八つの重点対策を定めた=表=ほか、「SAFEコンソーシアム」で労災防止の取り組みを表彰し、「事例集」で紹介している。
 製造・建設業などノウハウの蓄積が進んでいる業界の取り組みを第3次産業に広める狙いだ。厚労省安全課は「対策に取り組む事業者が社会的に評価される環境を整えたい」と話す。

SAFE コンソーシアムポータルサイト (mhlw.go.jp)

応募作品 - あんぜんプロジェクト (mhlw.go.jp)

 

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2024年3月26日 5:00北海道新聞どうしん電子版より転載