【大樹】大樹町農協の貯金課の20代女性職員=19日付で懲戒解雇=が、顧客の定期貯金を無断で解約し計約6700万円を着服した事件では、女性職員の上司による入出金記録のチェックが甘く、不正を長期間見抜けなかった。さらに、前職が金融機関職員で金融業務に詳しかった女性職員を6年近く同じ部署に配置し続けたことで、不正発覚が遅れた可能性もある。
 同農協によると、女性職員は2022年3月から今年2月にかけて、顧客約20人の40件以上の定期貯金口座を不正に解約。窓口職員が使う現金支払機から現金を引き出し、自宅に持ち帰っていた。伝票つづりをまとめる業務も女性職員が担当しており、発覚を防ぐため、不正に処理した分の伝票を抜き取り、破棄していた。
 同農協によると、貯金課では毎日の営業終了後、現金支払機の入出金伝票の確認・照合作業を、女性職員の上司が行っていた。ただ、この上司は、正規の確認手続きの一部を怠り、不正を見抜けなかったという。
 同農協幹部は「正規の手続きを守って、再確認を徹底していれば、もっと早く不正に気づけたはず」と、管理態勢の甘さを認める。
 また、年数回の監査も行っていたが、これは伝票の一部のみを抜き出してチェックするもので、伝票の破棄に気づくことはなかった。
 長年にわたり、女性職員に同課の業務を任せ続けた点も、発覚が遅れた要因とみられる。女性職員は金融機関を退職後、同農協に18年8月に中途採用され、同課に勤務。女性職員が着服を始めた22年には人事異動の対象となっていたが、同じ職場で他の職員の病欠や産休、退職などが続き、「特例」で異動を先延ばしにしていた。
 同農協は「農協は金融業務に慣れた職員が多いわけではない。女性職員を異動させれば、業務が回らなくなる可能性もあった」と説明するが、「早く異動させていれば、ここまで被害額が膨らむことはなかった」(組合員)との声もある。
 同農協の西川久雄組合長は「伝票の確認作業の徹底や、監査の回数を増やすなど、チェック態勢の強化を図りたい」としている。2024年3月22日 21:53(3月22日 23:58更新)北海道新聞どうしん電子版より転載