子どものころに肥満になると、大人になっても肥満になりやすく、生活習慣病の2型糖尿病や心筋梗塞などのリスクを高めることがわかっている。道内では肥満傾向の子どもが全国と比べても多く、早い段階から生活習慣の改善を始めることが重要だ。
 日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン」によると、6~18歳未満の肥満は、実際の体重が標準体重を何%上回っているかを示す「肥満度」で判定する。20~30%は軽度肥満、30~50%は中等度肥満、50%以上は高度肥満とされる。
■道内小6の18%
 肥満児のうち、肥満による高脂血症、肝機能障害、高尿酸血症などの健康障害を合併するか、その合併が予測される場合、治療が必要な「小児肥満症」と診断される。
 文部科学省の学校保健統計調査(2022年度)によると、肥満度が20%以上の肥満傾向児の割合は、肥満度の増加する思春期前の11歳(小6)で12.25%、道内では18.21%だった。背景に、ゲームやデジタル端末の普及による外遊びの減少のほか、感染症による休校・学級閉鎖による生活の乱れも指摘されている。
■動脈硬化早める
 子どもの肥満は健康にどのような影響があるのか。肥満外来を設ける宮の沢小池こどもクリニック(札幌市西区)の小児科医、小池明美さんは、「太りすぎて内臓脂肪が増えると、血管の動脈硬化を早める。コチコチ、ボロボロになってしまった血管は元に戻らない」と強調する。

肥満傾向児の割合

小池明美さん

学童期の肥満の4割、思春期の肥満の7割が成人肥満に移行するという研究結果もあり、将来、高血圧や糖尿病など生活習慣病発症の可能性が高まるという。
 小池さんは対策として「運動量を増やすことと、バランスの良い食事が大切。ただし、子どもは成長するので、極端なダイエットをしてはいけない」と指摘する。

肥満の主な原因は、カロリーの取り過ぎと消費量の少なさにある。肥満傾向の子への家庭での対応として、小池さんは①毎朝、体重を測定しグラフに記入する②ジュースは飲まず、おやつは小皿にひと盛りで我慢③ご飯は1膳まで④風呂掃除や雪かきなどのお手伝いと散歩、の四つを提案している。
■多職種チーム 心身に対処 札幌・道医療大病院に専門外来 親子に栄養指導やカウンセリング
 北海道医療大学病院小児科(札幌市北区)は、子どもの肥満に多角的に対処しようと、2020年10月から小児生活習慣外来を設け、多職種の専門チームで小児肥満症の診療に当たっている。

北海道医療大学病院の小児生活習慣外来で理学療法士(左)と共に運動に取り組む男児

 

小児科医や看護師が肥満の仕組みや疾患の概念を子ども本人や保護者に伝えた上で、管理栄養士が栄養指導を行う。さらに、公認心理師が親子へのカウンセリングを通して、食行動から他の行動への切り替えを促したり、理学療法士が自宅で楽しくできる運動を教えたりする。
 同院の小児科医、林麻子さんは「専門家が複数で関わることで、一人一人の子の家庭の様子を多面的に見て、どこに切り込めば肥満が改善できるか糸口がつかめる」と説明する。

子どもの肥満改善に取り組む同病院の小児科医、林麻子さん

例えば、ある7歳の女児は、コロナ下に生活リズムが崩れ肥満が悪化。母親に話を聞くと、育児はワンオペ状態で、発達障害のある弟に手がかかって家事に割く時間が限られており、栄養が偏っていた。
 そこで、母親個人へのカウンセリングも行い、献立の手本として活用してもらえるよう子ども食堂の利用を促し、地域との連携を図った。
 同外来はこれまで43人が受診し、8人が肥満度20%以下に改善して「卒業」した。このうちの一人、札幌市北区の中学1年の男児(13)は、「自分が変わっていくのを生活の中で実感でき、自宅での筋トレにも楽しく取り組めた」と振り返る。
 同外来担当の公認心理師、百々(どど)尚美さんは「肥満の子には『私はダメな子だ』と劣等感を持つ子も見られる。家族の協力を得て環境を整えることで、子どもたちの中に自分で自分をコントロールできる感覚が芽生えていく」と話している。

2024年3月16日 5:00(3月16日 18:18更新)北海道新聞どうしん電子版より転載