札幌東徳洲会病院(札幌市東区)は4月から、道内初の「ハイブリッドER(救急救命室)」の運用を始める。従来のERに高度な検査機器を配置し、緊急度の高い救急患者を移動させることなく、迅速に検査、診断、治療を行う。東北以北では仙台市の東北大病院に次ぐ施設となる。

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CTと血管造影検査が受けられる血管造影室。CTは後方のCT室に自走することができる(宮永春希撮影)

ハイブリッドERは、CT(コンピューター断層撮影)や血管造影、エックス線の各装置を1カ所に設置し、搬送された救急患者を、病院内を移動させることなく、迅速に診断から治療までを完結できる施設を指す。
 札幌東徳洲会病院のハイブリッドERは、CT室と血管造影室が隣接した構造になっており、部屋の間にある大きな扉を開けることで、CTが二つの部屋をまたいで自走することができる。このうち血管造影室ではカテーテル治療のほか、緊急手術を行うこともできる。搬送患者を最初に診る救急診療室は4室あり、すべて個室にしてプライバシーを確保、うち2室は感染症の拡大を防ぐことができる陰圧室とした。このほか、エックス線検査を受ける部屋もある。

搬送患者を最初に診る救急診療室はプライバシーに配慮し、すべて個室化されている(宮永春希撮影)

 

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CT検査を受けるCT室。奥は血管造影室(宮永春希撮影)

一般的なERは、患者到着後、救急医が検査が必要と判断すると、患者を病院内の別の検査室に移動して、検査終了後にERに戻し、治療する。緊急手術が必要な場合も手術室に移動させる必要があるため、治療開始までに時間を要していた。
 札幌東徳洲会病院も、外来などの混雑状況によってはCT検査に移動時間も含め最長で30分以上かかることもあるが、ハイブリッドERになれば最短で5~10分に短縮される見込みだ。これにより早急な診断、治療開始が求められる交通事故や脳卒中、大動脈解離などの患者の救命率向上が期待される。
 ハイブリッドERは国内では2011年に大阪急性期・総合医療センター(大阪市)で初めて導入され、治療開始時間の短縮や死亡率の低下が図られている。ただ、多額の投資が必要なため国内では十数カ所の医療機関しか導入されていない。

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松田律史医師

2次医療機関の札幌東徳洲会病院の本年度の救急患者受け入れ数は、札幌市内でもトップクラスの1万件ほどとなり、新年度はさらに増える見通し。松田律史(のりふみ)救急科部長は「現在、一度に受け入れられるのは12、13人だが、ハイブリッド化で15人程度は可能となる。救急患者の迅速な治療に生かしたい」と話している。