【美唄】北海道せき損センター(美唄市)を運営する独立行政法人労働者健康安全機構(川崎市)が、センターを札幌市に移転する方針を固めたことを受け、美唄市は12日の市議会の特別委員会で、引き続きセンター存続を求めていく考えを強調した。移転の時期や場所など具体的な計画は示されていないが、機構側と自治体で地域医療のあり方をどのように築いていくかが課題となりそうだ。

 昨年春に、老朽化を理由に市外を含め建て替えを行う案が明らかになって以降、市は存続に向け、機構側にさまざまな提案を行ったという。雪の多さなど美唄に立地するデメリットを感じているのなら、冬期間も患者を搬送しやすいように道路の除雪体制の充実を図るとしたほか、パラスポーツの振興支援、医師確保に向けた財政支援にも言及した。

 今年の2月27日には桜井恒市長のほか、美唄商工会議所などでつくる「北海道せき損センターの存続を求める委員会」の関係者が約6千筆の署名を機構に提出。地元の熱意を伝えた。

 今月12日の市議会北海道せき損センター存続等対策特別委員会では、桜井市長が「専門病院が偏在する札幌に移るより、(美唄の方が北海道の中央部に位置し)北海道を広くカバーできるかもしれない」と、改めて美唄での建て替えの利点を強調。美唄での存続を視野に「市にどのような支援ができるのかを中心に協議を進めたい」と述べた。

 一方、機構側は、センターの建物が老朽化している上、札幌は交通アクセスの良さや大学病院が立地していることを勘案し、移転先は札幌市内とする方針を固めた。署名提出時には、機構の有賀徹理事長が「札幌は患者が多く、全国からヘリコプターで搬送される患者を受け入れるのに便が良い。建設的な協議をしなければならない」などの話をしたという。ただ、地域医療の維持につなげるため、美唄市内の医療機関に医師を派遣するなどの方向で検討をしている。移転の時期や場所は明らかになっていない。

 センターは旧美唄労災病院が前身で、1955年に開院。全国から脊髄損傷患者を受け入れ、美唄市内の拠点病院としての役割を果たしている。

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札幌への移転方針が明らかとなった北海道せき損センター=昨年6月

2024年3月12日 21:29(3月12日 22:47更新)北海道新聞どうしん電子版より転載