札幌市は8日、2025年度にも廃止する方針の70歳以上の市民を対象とした市営地下鉄などの敬老優待乗車証(敬老パス)について、25年度以降も3~5年程度、希望者には現行パスを交付する経過措置を設ける考えを明らかにした。市は歩数などに応じてポイントを与える新制度への転換を計画しているが、年間の利用上限額が大幅に減ることなどから、高齢者や市民団体の反発が相次いでいた。
 市が同日の市議会予算特別委員会で明らかにした。25年度時点で70歳以上の市民は、現行の敬老パスを継続するか新制度を利用するか選択できる。26年度以降に70歳になる市民については、新制度のみ対象となる。経過措置の詳細な期間は、今後詰める。
 現行制度は最大で年間1万7千円を負担すると7万円まで地下鉄やバス、路面電車(市電)に乗れる。一方、23年度の事業費は約50億円に上り、高齢化による財政負担のさらなる拡大への危機感から、市は昨年11月、新制度への転換を公表。利用上限が2万円に引き下がるほか、ウオーキングや認知症予防講座など健康増進活動への参加に応じてスマートフォンのアプリに交通機関で使えるポイントを与えるといった仕組みが複雑として、「高齢者切り捨て」との批判が出ていた。
 秋元克広市長は2月の定例記者会見で「拙速に進めず、制度設計したい」と述べていた。
 現行制度存続を求める署名運動を展開する「札幌敬老パスを守る連絡会」の三浦誠一共同代表は「新制度に転換する市の方針は変わらない。引き続き現行制度の維持を求める」と話す。

2024年3月8日 21:24(3月8日 22:53更新)北海道新聞どうしん電子版より転載