刑務所出所者や非行に走った少年らの社会復帰を支える「保護司」の高齢化が、北見市とその近郊で深刻だ。北見地区保護司会(北見市と置戸、訓子府両町管轄)では現在、定数97人に対し92人にとどまり、8割以上が60代以上と年配者に偏っている。このままでは、今後10年で7割近くが保護司の定年を迎えて辞めることになり、同会は人材確保に力を入れ始めている。


■オンライン研修導入「現役世代の参加を」
 「体力的にいつまで続けられるか分からない。そろそろ若い人に託したい」。北見市の照井保さん(71)は不安そうに話した。市内の広告・写真制作会社「クリエイティブハウスフォーカス」の代表を務める傍ら、25年以上保護司として活動している。これまで担当した更生対象者は10~60代の40人余り。窃盗や薬物、詐欺、傷害など犯した罪はさまざまだ。「人生の分かれ道で悪い方、悪い方を選んで、結果罪を犯してしまう。身近に少しでも頼れる人がいれば違ったはず」。現在も男性1人を担当している。
 保護司は、犯罪や非行をして保護観察を受けている人と定期的に面談し、指導や助言をするボランティア。非常勤の国家公務員で、交通費など実費以外、報酬はない。
 定年は原則77歳以下で、特例で延長しても79歳以下。新しいなり手を確保できなければ、10年後には北見地区の保護司は定数の3割まで減少する見通しだ。
 同会によると、保護司のなり手はこれまで、保護司の人脈で民生委員や町内会などが声をかけ、定年後に始める人が多かった。ただ66歳までに登録しなければならず、山田孝会長(76)は「企業の定年年齢が引き上げられている上、年金も減っているため、なり手の中心だった60代以上の登録が減っている」と話す。全国的に保護司の数は減少傾向で、法務省は2023年5月、なり手確保策を議論する有識者の検討会を発足。年齢制限の緩和や無報酬の見直しについて議論を始めた。
 北見地区保護司会も、人材発掘へ試行錯誤を重ねている。昨年9月、保護司向けの研修会を道内で初めてオンラインで実施。研修会は年3回開かれ、講師の保護観察官から対象者との面接の仕方や法律の知識を学び、保護司としての資質を高める場として受講が努力義務とされている。ただ、平日昼に開催するため、働き盛りの世代は参加が難しいからだ。
 対面と合わせてオンライン会議システム「Zoom」で配信したところ、参加率が上がった。また、自宅での面接に抵抗がある人のために、同会がある北見市福祉会館の会議室を面接の場として用意。山田会長は「できるところは率先して省力化し、現役世代の参加を促したい」と話す。
 22年の犯罪白書によると、逮捕、送検された人の約6割が40代以下。38歳で同会の保護司になった男性(50)は、「対象者と年が近い分、より身近に感じて心を開いてくれる対象者も多い」と若手の参加を期待。「保護司となったことで、自分を見つめ直したり大切なことに気づけたり、自らも成長できた」と話す。
 保護司についての問い合わせは同会、電話0157・61・2411へ。

25年以上保護司を務める照井保さん。あと5年で定年を迎える

2024年3月11日 19:27北海道新聞どうしん電子版より転載