着なくなった中学や高校の学生服を安く販売したり、貸し出したりする動きが道内で広がっている。背景には、原材料費の高騰による新品価格の値上がりや、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の意識の高まりもある。成長に合わせてサイズを替えながら制服を一定期間借りられる「サブスクリプション(サブスク)」も登場。18日には公立高入試の合格発表があり、制服商戦はにぎわいを見せる中、老舗店は丁寧なサービスで対抗する。
 「発表日がピーク。希望の学校やサイズの制服が無い時もあり在庫を増やしたい」。札幌市豊平区の「学生服リユースShopさくらや札幌店」の金指佳子店長(44)は準備を急ぐ。
 着なくなった制服を2021年から扱っており、詰め襟やスカートなど約1300点が並ぶ。推薦入試で合格した人がすでに訪れ、発表を待つ保護者らからも在庫の問い合わせがある。金指店長は「連日10件以上電話が鳴る」といい、学生服を集める回収箱の設置場所を増やす考えだ。
 札幌市北区の道新吉村販売所は20年から着なくなった学生服販売を始めた。あいの里小6年の斉藤駿さん(12)は今春進学するあいの里東中のブレザーに袖を通し、「新品でなくても気にしない。ゆとりがある一着が見つかった」と喜ぶ。母陽子さん(45)は「新品の10分の1ほどで買えるのはありがたい」とブレザーを2500円で購入した。
 従業員の発案で始めた販売。スーパーなど9カ所に回収箱を設け、洗濯して、1着2千円程度で売る。従業員の田辺麻奈美さん(48)は「コロナ禍で着る機会が減り、状態が良い服も多い」と話す。約70校分の約1600点を集め、約860点を販売した。
 制服の「サブスク」も登場した。帯広市のレンタル業「ぎゃくし」は、ジャージー姿で通う中学生が多いとの声を受け、約20年前から制服を貸し出す。在庫数が増え、20年からは何度も交換できる3年間の定額プラン3万8390円(保証金別)を始めた。瘧師(ぎゃくし)博一社長(49)は「制服は年10回程度しか着ない。十勝ではレンタルで十分との意識が広がっている」と話す。
 中学の制服価格は上昇傾向だ。総務省の小売物価統計調査によると、札幌市では22年の男子の場合、07年比1万2013円高い4万5713円、女子も同1万3380円高い4万420円に。原材料費の高騰が影響している。

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札幌市の公立中学校の学生服価格推移。小売物価統計調査を基に作成

近年は性的少数者に配慮し、男子は詰め襟からブレザーに変更したり、女子もスラックスを選べたり、見直しが進む。あるメーカーは「制服が多様化し小ロットの生産が増える。同じ型を大量に作り価格を抑えるのは難しい」と吐露する。
 一方、約70年ほど制服を販売してきた札幌市中央区の「学生服の赤塚」は細やかな対応に力を入れる。サイズや数に限りがある中古と違い、体形に合った発注に応じられ、ブラウスの割引などの特典も用意している。高橋良代表(52)は「対面で接客し、3年間を見越して適したサイズを紹介できる」と強調する。
 制服の再利用が広がる背景について、藤女子大の木脇奈智子教授(家政学)は環境への意識の高まりやフリーマーケットアプリの普及を踏まえ、「物価は上がっても給料は上がらない中、お金をかけない一つの知恵。人が使った物という抵抗感や恥ずかしさは無くなってきている」と指摘する。

数多くの高校の中古学生服が並ぶ「さくらや札幌店」。金指店長は整理を急ぐ

2024年3月9日 20:11(3月9日 21:59更新)北海道新聞どうしん電子版より転載