札幌市は、2カ所ある市営火葬場で8日から導入する火葬日時の事前予約について、当日午前8時まで予約できるように変更する。当初、前日午後3時までとしていたが、葬儀をせず火葬だけを行う「直葬」が多い生活困窮者などに配慮した。希望日が予約で埋まってしまった場合は、火葬場の霊安室に遺体を安置してもらい、費用は市が負担する。
 現在、清田区の里塚斎場と手稲区の山口斎場は、午前9時半から午後3時まで到着順に火葬を受け付けている。両斎場で1日に火葬できるのは177人。2020年度の1日あたりの平均火葬人数は里塚斎場が102人、山口斎場が72人だった。
 休業日の「友引」の翌日は混雑し、177人に迫る日もある。葬儀場からの出棺がピークを迎える午前中は、最大約1時間の待ち時間も発生。市は29年度に友引の翌日の火葬人数が限界に達すると予測する。
 利用の平準化を図るため、市は昨年、葬儀業者がインターネットで事前予約するシステムの導入を決定。予約期間は1週間前から前日午後3時までとした。


「直葬の需要は高くなっている」と話す札幌市民直葬センターの藤森浩明センター長

 

 火葬は死亡後24時間が経過すると可能で、通常の葬儀を行わない「直葬」を希望する遺族は、死亡翌日の火葬を希望するケースが多いという。
 ただ、市の従来の方針通りに予約期間を前日午後3時までとすると、午後2時ごろに亡くなった場合でも各種手続きで予約が間に合わず、火葬できるのが死後翌々日にずれ込む場合もあるため、葬儀社などから不満が出ていた。
 費用面でも課題があった。蓮正社セレモニー(白石区)の藤枝正樹社長によると「希望日の予約が埋まり、火葬日が延びた場合、1泊2万円程度の安置費などがかかる」という。市が1~2月に実施した葬儀業者向け説明会では「生活保護受給者などの場合、安置費は誰が負担するのか」との声が続出した。
 市内で生活保護を受ける男性(79)は「子供に葬儀費用は頼れず、物価が上がり、費用をためる余裕はない」と漏らす。
 これらの懸念を受け、市は2月末、火葬希望日当日の午前8時まで予約期間を延長。予約が埋まっていた場合、両火葬場に計6カ所ある霊安室に遺体を安置し、費用は市が負担することにした。市保健福祉局は「直葬が増えているという実態を把握していなかった」と話す。
 札幌市民直葬センター(白石区)の藤森浩明センター長は「孤立・無縁社会は確実に進んでおり、今後も直葬は増える」とみており、6カ所の霊安室では不足する可能性もぬぐえない。
 全国の火葬場に詳しいNPO法人日本環境斎苑協会(神奈川)の森山雄嗣主任研究員は、「火葬の受け入れ時間延長などで1日の上限を引き上げる検討も必要」と指摘している。

2024年3月6日 21:02(3月6日 22:28更新)北海道新聞どうしん電子版より転載