旭川市立大保健福祉学部コミュニティ福祉学科の学生が、ゼミの研究として、先駆的な活動を行う全国の町内会を調査している。加入率低下や役員の高齢化といった問題に、デジタル技術を活用して担い手の負担を減らすなどの事例を、現地を訪れて取材。調査結果を地元旭川の町内会に伝え、活動に生かしてもらう。
■3月下旬に地元向け発表会
 同大の大野剛志教授のもとで地域社会学やまちを学ぶ2~4年の学生14人が参加。市の依頼を受けた研究でもあり、本年度から公立化した強みを生かし、地域と連携した実践的な教育活動を進める狙いがある。
 調査地域は、室蘭市、胆振管内厚真町、福島県郡山市、盛岡市の道内外4カ所。
 学生たちは昨年秋から現地に足を運び、各町内会を取材。室蘭市では、情報発信の手段として回覧板の代わりに交流サイト(SNS)を使って町内会員の負担を減らしたり、胆振東部地震を経験した厚真町では、手書きの新聞を配布したりするなど、それぞれ工夫して、町内会活動を行っていることを聞いた。
 現在は調査をまとめている段階で、2月16日には同大で、学生たちが発表会で流す動画の撮影に臨んだ。ゼミ代表の3年土川愛香さん(21)は「住民が求めるものと、町内会ができることのマッチングを意識することが重要。発表会では地域がつながりを持てるようなヒントを共有したい」と言う。3月下旬に、旭川市内の町内会の人たちを前に、結果を発表する予定だ。
 市内の町内会加入率は近年減少の一途をたどり、2014年度の60.3%と比べ、23年度は55.9%と4.4ポイント減少した。これを受け、旭川市は昨年から、行政情報の回覧や高齢者の見守りの強化のため、スマートフォンやタブレット端末で暮らしの情報をまとめて見られる「あさひかわ くらしのアプリ」の運用を開始。しかし、町内会活動を担う高齢者のデジタル技術に対する苦手意識などから、アプリ導入だけでの課題解決は難しく、さらなる解決法を模索していた。
 今回の調査は、学生側は、実際に現場の声を聞くことで実践的な研究ができる一方、町内会側も若者目線のアイデアを活動に生かすことができ、双方にメリットがある。研究を依頼した市地域活動推進課は「地域コミュニティーに関心を持つ人材を育て、一緒に解決方法を考えることで、まちの活性化につなげたい」と期待している。

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発表会で流す動画の撮影に臨む旭川市立大の大野剛志教授(右端)とゼミの学生

2024年3月4日 21:14北海道新聞どうしん電子版より転載